奇抜な発想を楽しむ
普通思いつかないことを百間は思いつく。馬の針灸師といった職業が存在することを誰が思いつこうか。設定や話の流れに無理があるのは夢であるから当然としても、意識あるうちにそういった「夢」を思いつくのは尋常ではない。
文字通りに受け止めるためには、鋭い感受性が必要である。難しい文彩とか心理描写などを読み取るのは簡単だ。
「盡頭子(じんとうし)」は、1921年の作品。女性を紹介された私は、その家に向かう。誰かの妾らしく、主人が帰宅してしまう。女性はとりつくろうために、弟子入りしにきたと主人に嘘をつく。そこで、名付けられたのが「盡頭子」という号だ。本文にも「何の事だか解らない」と記されているように、意味不明である。
主人の弟と準備の作業にかかるか何をしているか私はさっぱり解らない。そして、夜、仕事に出かける主人についていこうとして、主人の職業が「馬のお灸」であることを知る。
あらすじを書いていても、むなしいようなストーリーだ。
そして、疑問は募る。誰が馬の針灸師の妾を他人に紹介したのか? 馬の針灸師は実在するのか? 盡頭子とは何か? 先生の弟は本当に馬なのか? 結末はどうなったのか?
しかし、あまりにも荒唐無稽な話に読者はついていけないものである。百間はその絶妙なバランスをとっている。文字通り受け止め、あまり詮索しないのが正しい読み方といえよう。それに、疑問を解明するより応用して、象の針灸師を想像する方が楽しそうである。
(追記)
馬の鍼灸師について、渉雲堂さんと獣医師の保坂虎重さんから指摘がありました。お二人のサイトなどを見て、ポピュラーな治療法で、決して珍しいものではないということが分かりました。不勉強を恥じています。ありがとうございました。
また、個人的には鍼灸院に行ったことはなく、よく知らなかったのですが、結構奥が深いことが分かりました。象に鍼灸師も実在することにびっくり。

コメントする