2004年2月22日

石原江里子『A Thousand Winds』が気に入ってしまった

 日ごろ、ジャズボーカルをほとんど聴かない。いや「嫌い」であるといっていい。ときおり、何かの間違いでボーカルCDを買ってくるが、1回聴いて、そのままCDを片付けてしまうことが続いている。英語力がなく、歌詞に気が取られてしまい、音を楽しめないことが大きな理由の一つ。
 でも、今回はカバーの美貌に負けて買ってしまった。Swing Journal誌のインタビューで、ジャズボーカルの練習は英語の練習にもなったという石原本人のコメントも背中を押した。ネイティブでない日本人の英語なら分かるかもしれない、という魂胆だ。
Ishihara.jpg
 石原江里子『A Thousand Winds』(ポニーキャニオン)で、結局えらく気に入ってしまった。声が体に馴染むといったかんじだ。歌詞が英語だなどはどうでもいいことである。

 レコード会社のサイトによると、国立音大のピアノ科を卒業後、ジャズの勉強のため、イギリスのギルドホール音楽院に留学し、卒業後、一旦、帰国したが、1997年に再渡英しロンドンを拠点に、活動を続けてきた。32歳。2月から4月にかけて来日ライブも予定されている。ロンドンでジャズを学んだというのもいい。
 確かに英語の発音は分かりやすく、リスニングの練習にはぴったりかもしれない。しかし、久しく歌の歌詞を読んだ(聴いた)ことが無かったのだけれど、歌詞の内容は赤面してしまいそうである。「私って幸せ」とか、「あなたの唇」、「あなたの中の小さな少女」、「ブルースは友だち」(訳語はkenyamaの勝手訳)など私が書いていて恥ずかしくなりそうだ。小学生の時、山口百恵やピンクレディーの歌を聴いていて、「どうしてこうも好きとか愛とかしか歌わないのだろう」と疑問と違和感を持ったことを思い出した。「大人はそんなことしか考えていないのか?」
 中身は、最初からラブソングである。「LICKY TO BE ME」。何かを噛みしめるようなはっきりとした発音で、「自分」であることのラッキーさを歌う。2曲目もGershwinのラブソング「'S WONDERFUL」。Colin Oxley(g)の長いソロを挟む。3曲目のラブソング。Andy Panayi(sax)ソロでは、Steve Brown(d)とMatt Miles(b)が明るい雰囲気で、二人の関係を祝福しているのだろうか。4曲目は「DON'T BE ON THE OUTSIDE」で、外部と内部、正しい側面と悪い側面を対比させ、本人による解説によると「ちょっぴり哲学的な曲」となっているが、本当にちょっぴりである。「隣の芝生は青い」だけである。
 7曲目と8曲目は石原のオリジナルで、歌の無い8曲目「SONG OF THE WIND」は、歌詞に煩わされることなく、気持ち良く聴くことができる。鳥のさえずりと風の音が聞こえるロンドンの緑を表現しているそうだ。
 最後の曲は、アルバムのタイトルでもあり、9・11同時多発テロで話題になった「A Thousand Winds(千の風になって)」だが、ちょっと詰まらない。何かと話題を作って、CDを売るためには仕方ないのだろうけれど。
 文句ばかりつけているようだけれど、まったく逆である。聴いていると心地よいのだ。確かに上原ひろみの『another mind』(TELARC)の勢いとパワーも魅力的だけれど、そこにはない優しい声の魅力がたまらなく愛おしく聞こえる。「スマートで小粋」とサイトにはあるけれど、その通りである。悔しいけれど、好きである。
 念のためですが、決して顔の好き嫌いで、善し悪しを言っているのではありません。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kenyama.net/mt-tb.cgi/49