ニューヨークに行きたくなる「Late Night New York」
1999年に録音されたTom Brigandi(b)の「Late Night New York」(サウンドヒルズレコード)のジャケットは、ベースをもって歩く本人とおぼしき人物も描かれ、「ニューヨークに行きたいなあ」という思いがつのる作品だ。スタンダードが多く、聴きやすいことも魅力だ。

今、ニューヨークと言うと、どうしてもツインタワーが旅客機によって破壊されたことがイメージされてしまうのか、観光を含めて旅行先として人気はないのかもしれない。確かに格安航空券もニューヨーク往復が札幌より安いような価格で売られているのを見かける。入国のチェックが厳しくなったり、フライトがキャンセルされたりする報道も行く気をそぐ。が、1950年代から60年代にかけて、JAZZという音楽にとってかけがえのない場所であったことは確かで、ジャズクラブに入り浸ってみたいと思う。
さて、ベースの音が自宅の貧弱なスピーカでは上手く聴こえない。特に持ち歩いているiPodで聴くと悲惨である。以前ジャズ喫茶で同じCDを聴いて、耳を疑ったこともある。特に古い録音をCD化した作品ではその傾向が激しい。Paul Chambersのベースなどほとんど聴こえないこともある。しかし、この作品はベースの音がしっかり録音されていて楽しめた。これはこれで困る人もいるのだろうが。
テナーサックスはEric Alexanderで、「サイドマンの時の方がいい」と言われるが確かにそうなのかもしれないと思う。もちろん、リーダー作品が悪いというわけではない。相対的な問題だ。
冒頭の1曲目は「Brooks Brothers」。以前Brigandiが所属していたChuck Mangioreの作曲だ。心地よいメロディが心をわくわくさせる。くっきり伝わるDino Losito(p)のソロでは、Danny D'Imperio(ds)とベースがぐいぐいと引っ張る。2曲目の「Rack 'em」はBrigandiのオリジナル曲。テナーとアルトの両サックスが聞く耳に迫ってくるようだ。ベースのソロもよい。「Bobbie Pin」は軽やかなリズムで始まって次のフレーズへの楽しさが尽きない演奏になっている。ベースのPaul Chambers(1935-69)作曲による「Beauteous」は、Joe Carello(as)のソロが魅力的。続くEric AlexanderとDino Losito(p)が聴かせたあと、しっかりとした音質で力強いベースソロが続く。Paul Chambersの演奏より、軽やかで楽しい。6曲目の「This Time The Dream's On Me」は、ベースをたっぷり味わえる。ポピュラー音楽の大御所、Sammy Fain(1902-89)作曲の「Secret Love」、Cole Porter(1891-1964)の「Easy To Love」の熱演で終わる。
このCDには続編もあって、タイトルは「After Hours」で、バンド名がTom Brigandi and The Late Night New York Bandである。
