2004年2月 3日

坂口安吾の「夜長姫と耳男」

 『坂口安吾全集』(筑摩書房、未完結)で、「夜長姫と耳男」を読んだ。深夜に読んでいたせいもあるが、怖い話である。飛騨のタクミと王朝についての安吾のエッセイを読んでいたせいもあるが、物語の構築、寓話の形成は優れている。姫の父親がなぜそのような権勢を誇っているかのという、素朴な疑問は、かつての正史では考えられない「飛騨王朝」の何らかの形であろう。

 物語自体は、蛇の生き血、その後は動物の生き血を飲みながら彫刻を作り上げる様と、その行為を反復する姫。狂気の向こう側の冷静な技と感性。
 下から上に上がっていく物語。耳男は、村から高いところにある屋敷に行く、最後のクライマックスは、村を一望できる楼閣の上だ。姫の上から下への視線と、耳男の下から上への視線。
 解題にある、4(?)人の感想もおもしろい。あまりに通俗的な、「反俗」というタームでまとめ、全く理解していない3人の一方で、渡辺一夫が理解しているのがおもしろい。また、書いているうちに勢いで、細部が忘れられ、構成や細部に足りない点があるというのは、読んでいるときの勢いを、彼らが誤解しているのではないか。安吾がそうしたすかすかな作品をつくるとは思えないのだ。
 何か、中編小説の理想型、きまりがあって、そこに合致しない作品は、その不備を指摘し、大家ズラをする、文壇人といった風情の3人。途中から物語から消えたほかのタクミ2人などどうでも良いことだ。

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