2004年2月 9日

森美術館の「六本木クロッシング」展は面白い

 開館記念展については以前書いたけれど、(「森美術館のハピネス展」)今回の「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望」は結構楽しめた。つまらない作品も多いが、見ていて気になった作家、作品を並べてみたい。
 ちなみに「六本木クロッシング」は、日本やアジアの若い作家の発表の場であることと、現代美術がなぜ日常生活で不可欠なのかという議論の場であることを目指した森美術館の理念を形にした第1回目展という位置づけだ。

 森タワー53階を中心にした会場には6人の学芸員が選んだ57人(組)の作品が並ぶ。広い空間がごった煮のようになっているが、「ハピネス展」のような不快感は感じさせない。まず気になったのが深澤直人(1956生)の「±0シリーズ」だ。シンプルなデザインの家電製品や日用品がならぶ。会場の片隅にぶら下げられた緑の「非常口」の表示灯が動いたり、走ったりするコミカルな動きも、ささいな「意外感」を感じさせる。
 八谷和彦(1966生)の「OPEN SKY」プロジェクトは、人が一人搭乗できる「パーソナルジェットグライダー」をつくることが目標で、会場には記録写真や模型だけでなく、飛行機をモチーフにした作品を制作する前川知美の「メーヴェ」などが並んでいる。八谷はユニークなメールソフト「ポストペット」のディレクターとしても知られる。2003年に開かれた熊本市現代美術館での個展も見たけれど、アニメなど平面的な作品が人気を集める中で、「空を飛ぶ」という極めて身体的な試みに取り組む真剣な(?)姿勢が楽しい。
 会場の最後に近づき、「最初の絵画」、「へんな絵」など「絵」を軸にした短い文字をくっきりとフェルトに刺繍した丸い作品が目をひいた。「Mission Invisible」というユニットの作品で、中心人物は石原友明(1959生)、松井智慧(1960生)の2人。大阪在住で関西を中心に活動しているという。視覚に訴える作品が並ぶ中で、文字を改めて前面に打ち出し、配置と並んで最も印象的な作品だった。また、ルパート・キャリー(1968生)と高橋知子(1966生)の「パレード無しの・・・」は、シュレッダーにかけられた紙をビルの上からまき散らすというパフォーマンス。以前、赤瀬川原平らが銀座の町で、ビルからさまざまなモノを落とすパフォーマンスがあって、その猥雑さと無茶苦茶さが60年代の象徴のように感じたけれど、このパフォーマンスはきれいなシュレッダー片で、時代も変わるとまき散らかすものも変わるのだ、と感心した。実際に、会期中六本木ヒルズで紙片をまき散らかすイベントもあったようだ。
 図録では、森美術館のシニア・キュレーター片岡真実が、作品を「凝視、感覚の回復、生命の実感」、「日常の実践にみる新しいポジティビティ」、「拡張する身体、都市、増殖するイメージ」、「記憶、アイデンティティ、再生」といったテーマで解説していたが、あまり難しいことを考えないで、楽しめる会場であろう。
 同時開催の、草間彌生展については後の機会に。

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