2004年5月 5日

山中千尋のDVD『Leaning Forward』でニコニコ

 ジャズに限らないと思うけれど、CDで演奏を何度も聴くことはあっても、演奏風景を収録した映像作品を、何度も見たくなることはない。耳だけで聞いたほうが、想像力を豊かにできるからだろうか。でも、ライブで見聞きした演奏を記録に取っておきたい、と思うことはある。そして、そこでしか聴くことのできない作品があるとしたら尚更だ。決して何度もプレーヤーにかけるわけではないけれど。
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 山中千尋トリオによる昨夏に発売された『Leaning Forward』(2003、澤野工房)はそんなDVDだ。2003年2月15日の大阪でのDVDの公開収録が、偶然出張日程と重なった。初めて聴く山中千尋のライブだった。クレーンやレールが設置され、カメラが宙を動き、演奏のやり直しや中断もあって、聴くだけでなく見るのも楽しいライブだった。ドラムスはBen Perowsky、ベースはBen Street。

 もちろん、DVD作品としても十二分に楽しめる。本当は5.1chのサウンドが収録されているようだが、自宅では再生できないので分からない。
 ステージの背後は、大きなガラスで大阪の町並みが時間とともに変化する姿も雰囲気を醸し出す。山中も衣装を、セットごとに着替えて場を盛り上げる。もちろん、笑顔やドラムスとベースの二人への目線のやり取りも楽しめ、現場では体験できない角度での「映像」もうれしい。
 1曲目は「Girl From Ipanema」で、原曲への優しい扱いを感じる。2曲目は一転してゆっくりムードの山中オリジナルの「Melo」。このDVDでしか聴けない作品だ。演奏前の表情がかわいい。息を置いて、確かめるように音を出す。ベースも印象的に空間を刻み、ドラムスが耳に迫ってくる。3曲目「Taxi」は、セカンドアルバム『When October Goes』の冒頭に置かれたオリジナル。山中が首をひねりながら演奏する姿は圧倒的に美しい。徐々に外が暗くなる。5曲目は「Living Without Friday」は、ファーストアルバムのタイトル曲で、力の入った演奏が嬉しい。演奏する指元が楽しめるし、下唇を噛む山中の表情もはっきる分かる。ドラムスとベースのピアノへの「突っ込み感」はCDより少ないかもしれない。で、ここでTwilight Setが終了。
 Evening Setは、文字通り「夜」の景色が広がり、車の前照灯が背後を流れる。最初は、Gershwinの「I Got Rhythm」で、Evening Setになって緊張がゆるんだのか、たのしさそうな笑顔をみせ、外を見やる余裕も。演奏は、何げに折り込まれたメロディーの断片が楽しい。2曲目は山中オリジナルの「S.L.S」で、変拍子の肩を揺らせながら、何かを口ずさんでいる。5曲目は、ここでしか聴けない「2:30 Rag」である。おどろおどろしい出だしから、緩急のある演奏で、文字通り「ウキウキ」してくる。この演奏で一旦終わるので、「Thank you, Osaka」と締めくくられるが、アンコールで、Duke Ellingtonの「In A Sentimenral Mood」も収録されている。
 ボーナストラックでも、山中は衣装を変える。サービス精神が素晴らしい。「Someday Somewhere」も他では聴けないオリジナル曲で、心温まる雰囲気。最後は、中島みゆきの「Sejo」で本当におしまい。
 山中のMCがまったく収録されていないのが残念だ。結構面白かった印象がある。もちろん、DVD「作品」とするには、不要なのだろうけれど。
 5月12日にはサードアルバムの『Madrigal』(澤野工房)が発売予定で、今から楽しみである。各地でのツアーもあって、できる限り聴きに行くことにしている。

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