ファンキーの原点、Horace Silver and The Jazz Messengers
ファンキー・ジャズの原点と言われるHorace Silver(p)の『Horace Silver and The Jazz Messengers』(Blue Note)である。ジャケットの指を立てている写真が印象的。ほとんどがSilverのオリジナル曲で、ファンキーな演奏とあわせて、作曲家Silverの魅力も伝えてくれる「ハードバップ」と呼ばれるジャズの入門盤である。

The Jazz MessengersというとArt Blakey(ds)で有名だが、1956年に二人が別れるまで、BlakeyとSilverの双頭バンドだった。このアルバムは、Silver名のついた唯一のThe Jazz Messengersアルバムである。録音は、1954年と55年で、メンバーは、Kenny Dorham(tp)、Hank Mobley(ts)、Doug Watkins(b)、Art Blakey(ds)。Silver作曲によるジャズの古典「The Preacher」、「Doodlon'」が収録されている。
Horace Silverは、1928年、コネチカット州生まれ。父親がアフリカ系ポルトガル人で、アフリカ大陸最西端ヴェルデ岬の民俗音楽を聴いて育ったという。Thelonious Monk(p)とBud Powell(p)の影響を受け、高校時代からピアノなどを演奏。1950年にStan Getsに雇われてプロになり、翌年ニューヨークに移る。以来、Miles Davis(tp)らトップミュージシャンらと共演している。
アルバムは、Silverが滞在していたホテルの部屋番号から取った「Room 608」で始まる。このネーミングのイージーさが堪らない。2曲目の「Creepin' in」はピアノの音が印象的にハートに忍び寄ってくるようで、その怪しい雰囲気がたまらない。3曲目は「Stop Time」で「時間よとまれ」とばかりに、次々とフレーズが飛び出してきてスリリングな演奏だ。
で、一躍Silverを大スターにしたのが、6曲目の「The Preacher」である。出だしから、思わず両手が動き出しそうなメロディーで驚く。説教者と伝道師という宗教的な意味だが、当時ジュークボックスで大ヒットしたという。レコードを買える人にしか訴えなかったジャズが、ジュークボックスで火が点き、SilverはBlue Noteレコードのドル箱になる。しかし、プロデューサーのAlfred Lionはこの曲を気に入らなかったようだ。確かに、同時代のジャズに比べて、ちょっと異質な感じはする。一方、8曲目の「Doodlin'」は、プロデューサーAlfred Lionのお気に入り。確かにこの時代の暗重くかっこいい演奏である。Dorhamのトランペットがムードを高める。聞き比べてみると面白いし、いずれもジャズの古典である。
さて、7曲目の「Hankerin'」だけがMobleyの作曲。Mobleyのソロの後、Dorham、Silverのソロが続く。「憧れ」という意味のタイトル通り、何かを前のめりに渇望しているのだろうか。Blakeyのドラムもよい。

コメントする