山中千尋の『Madrigal』が発売になった
大好きなジャズ・ピアニスト、山中千尋の3枚目のCD『Madrigal』(澤野工房)が発売になった。職場を抜け出しCDショップに走って入手し、CDをすぐさまiTunesで変換、iPodで聴きまくっている。で、今は自宅で聴いている。

本人がぬいぐるみと椅子でくつろぎながら、果物の受話器で話しているジャケットは今までと趣向が違い、「こども時代に捧げられた」というアルバムだけに、山中の「初め」の思いが込められているのだろうか。3枚目でもあって、遊びと余裕と、山中の魅力を存分に振りまいてくれる作品である。
冒頭は、「Antonio's Joke」。オリジナルでライブで何度か聴いた曲。おどけたようなピアノの音色とリズムの「いったりきたり」が楽しい。2曲目は、山中の師匠であるGeroge Russellの「Living Time Event V」で、ハッキリとした鍵盤の音が耳に残る。北見柊のライナーノーツにあるように「非常にカッコいい」ので、堪らない幸福感を感じる。アルバムはここで終わってもいいくらい。
もちろん終わるはずもなく、3曲目はタイトル曲の「Madrigal」、辞書を引くと「抒情短詩、小恋歌、16世紀イタリアで生まれ17世紀にかけて英国で広まった無伴奏声楽合唱、14世紀イタリアの田園詩」などという意味である。期待が高まる出足で、メロディが心を暖めてくれる。これが山中の「こども時代」なのだろうか。4曲目は一転して、ガンガンと始まるドラマティックな演奏。ピアニストで作曲家であるCeder Waltonの作品だ。5曲目は「School Days」だ。日本のジャズ・ビブラフォン奏者の草分け、平岡精二の作品で、原型を何とか感じさせる編曲である。流石山中。
6曲目の「Salve Salgueiro」は、ラテンなリズムが気持ちを高めてくれる。くっきりとしたピアノで、山中の表情が浮かぶようだ。7曲目は、スタンダードで「Caravan」だが、隊商とは名ばかりで、独特の編曲によってラクダごと足をつまずきそうである。砂漠では、そう簡単に前に進むことはできないのだろう。イラクの自衛隊への比喩だろうか? アキコ・グレースの『New York Style』の「Cararvan」と聴きくらべると、山中世界が見えてくるようだ。
8曲目が抜群である。タンゴのようだが多様な音が空間を埋めてくれる。ピアノ・トリオの作品とは思えない演奏(録音)で、ベースの音が印象的。背後に鳴る高い音も気になる。最後は「Take Five」だが、テンポが速く「山中世界」へ一直線である。外れたようできまった編曲である。
たまらない3枚目のアルバムで、もっともっと楽しませて欲しいと思う。もちろん、CDで聴いている山中とライブ会場での山中は、どこか「緊張感』と「サービス精神」が違っている。週末から始まるライブ・ツアーが楽しみでしようがない。

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