山中千尋の2004年ウィンターツアー東京に
ジャズの醍醐味が即興演奏に込められた演奏者の思いと表現であるとするならば、同じ演奏者の同じ曲目を聴き続けることは、大いなる楽しみの一つであるはず。
何度も足を運んだ山中千尋の日本でもツアーも暫く無いらしい。グリーンカードを取得するため、アメリカを出国できなくなるからだという。次にはニューヨークに直接聴きに行くしかないわけ。12月3日、東京・第一生命ホール「山中千尋ニューヨーク・トリオ・ウィンターツアー2004」を聴きに行った。確か3回目の第一生命ホールでの公演である。

しばらくライブを日本で聴くことができないわけで、きちんと眼と耳に焼き付けていこうと出かけていった。
5分遅れで、トリオが舞台に登場する。メンバーは、夏の公演と同じ、Matt Brewer(b)とRodney Green(ds)である。黒やえんじ色のノースリーブに黒のスカートで山中は登場である。
セットリストは以下の通り。
1, RTG
2, Take Five
3, Madrigal
4, School Days
5, Never Let Me Go
6, Implosive
(休憩)
7, Girl From Ipanema
8, Night And Day
9, Ballad For Their Footsteps/ Three Views Of A Secret
10, Antonio's Joke
11, Yagibushi
(アンコール)
12, Just In Time
13, So What/ Lesson 51
会場と座席の位置の関係であろうか、音が腹に伝わってこない。2のベースソロでまず、そんな感じがした。ピアノソロでは、CDなどで聞き慣れたフレーズが散りばめられて楽しめる。
3のイントロは、ドラムスの野生の叫びを思わせるような土着的なリズムで始まる。CDのイントロをもっと膨らませた感じと言えばいいだろうか。夏のツアーの「Madrigal」よりゆっくりとした内省的な雰囲気が漂う。ただ、聴いているうちに、メロディーが「出かけるときは忘れずに」と聞こえてきてしまって困る。
メンバーの中で、夏のツアーで「スネオ」と呼ばれていたBrewerを、「引き立てる」あるいは「いじめる」合意が成立していたのであろうか、ベースソロがふんだんに盛り込まれている印象が強い。ベース自体ががんがんと音の伝わる楽器でないだけに、弱く感じるし、ソロが終わった後の拍手も1回だけだった。ドラムのソロが聴きたかったが無かった。
聞き耳を立てたのは、11のイントロ。長いし、おどろどろしく期待を高めていく。また更に進化する八木節である。
アンコールでは、ピアニカによる「So What」で、必死の表情で空気を楽器に送り込む山中の演奏も楽しめ、満腹の2時間であった。
「サイドマンだと、言われた曲を演奏していればいいので楽だが、リーダーだと喋らないといけないので大変」と、本人は不得意とするMCも相変わらず楽しい。
「Madrigal」は、初恋の思い出が込められた作品だそうで、その男の子から「山中は廃止されたローカル線のロハ何々に似ている」と言われ、学校を休んだ話しや、後半のセットでずり落ちてきそうなワンピースにマネージャーがセロテープを貼った話し、恋人で無い情けないアントニオの話しなど、とりとめの無いMCは想像力を逞しくできて、いずれ一冊の本にでもまとめて欲しいくらいである。
それに、2、5、8とスタンダードの目立つ選曲で、マネージャーから「誰が君のスタンダードを聴きたいのか」と言われたらしいが、「私は聴きたい」と答えたいと思う。
「しばらくお会いできない」。コンサートは終わった。次は本当にニューヨークに聴きに行こうかしら。
