読書する場所と雰囲気を考えて読む
書店でフランス小説の邦訳を買って、そのまま近くの店に入る。カウンターでうまいビールを飲みながらページをめくる。小説の舞台はフランスの海岸に近いジャズ・クラブ。そこで、かつてピアノを捨てたジャズ・ピアニスト、シモン・ナルディスとクラブのオーナー女性が運命的な恋に落ちる。パリに残された妻は、事故死する。語り手は、ピアニストの友人で、その後の二人のことを言外にほのめかす。

クリスチャン・ガイイ(Chiristian Gailly)『ある夜、クラブで』(野崎歓訳、集英社、2004)は、そんな小説である。表紙にはBill Evansの『Waltz For Debby』(Riverside)のジャケットがあしらわれている。クリスチャン・ガイイは、1943年、パリ生まれで、サックス奏者として活動したが、87年に小説家としてデビュー。この作品が11作目という。
「ジャズ小説」である。フランスでヒットしたらしいけれど、お話としてはあまりに「できすぎ」というか、「ねらいすぎ」である。ただ、短くてすぐに読み終わるので、飲みながら読むのには最適である。バーでドゥルーズの『差異と反復』を読むのは辛い。
哲学書は、やはりコーヒーを飲みながらだろうし、ジャズ・エッセイは、べろべろに酔っぱらってからの読むのが楽しい。
この本は、素面で読むときっと腹が立つだろうけれど、ほろ酔い気分にはぴったりの一冊である。ただ、読んできたのがチェーン店のキリン・シティであったのが少々残念である。
