山中千尋の「Tokyo Main Dining」で、ライブの魅力を再確認
やっぱりライブは格別である。音が腹に伝わる力、演奏者の表情。たまらないものがある。ジャズ・クラブでお酒が飲めると更によい。たばこも。

先日(28日)、外食大手のシダックスが経営する「Tokyo Main Dining」(渋谷区)で開かれた山中千尋さんのライブに行ってきた。大通りに面したガラス張りのジャズ・クラブである。メンバーはTommy Campbel(ds)、Gregg Lee(b)のトリオ。最初にチャージを払って、まず生ビール。「うまい」。まわりを見回すと、あまり一人で来るような雰囲気ではないけれど。
ガラス窓には、新アルバムのポスターが何枚も貼られ、東京Jazz2005のプレ・ライブという位置づけもあってそのポスターも並ぶ。外からリハーサルの様子も窺えて、うれしくなるような雰囲気である。ただ、建物の本来の趣旨であるカラオケボックスの受付と隣接していて雰囲気はあまりそれらしくない。
ライブが格別であることを実感したのは演奏が終わってから。シェフによる料理の説明があって、食事が出始める。8時半を過ぎ、お腹が空いている。
耳を澄ましているとBGMに新しいCDらしき音楽が聞こえてきた。聞き慣れない曲からDVDに収録されている名演「2:30 Rag」など。9月7日発売の新アルバム『Outside By The Swing』(Universal)であろう。
前菜、冷製パスタ、魚と肉のメイン、デザート、珈琲と、ミュージックチャージ10,000円に含まれたコース料理が出てくる間、にやにやしながら聴いて食べているとすぐに料理は無くなる。味も含めて、ミュージックチャージを引いた値段を考えると、こんなものであろう。
もちろん音量も小さいし、それで新アルバムをどうこう言っているわけではない。テンポの速い「Cleopatra's Dream」や、満喫できそうなピアニカ、「進化」した「Yagibushi」など、発売日が楽しみに食事どころではない。
しかし、ライブを聴いていた同じ会場でBGMを聴いていると、さっきまで目の前で繰り広げられていた演奏の魅力がじりじりと伝わってきた。
建物の雰囲気やカラオケ・ボックスの待合室の声が漏れるなど環境は決して良くないし、値段も高い。ただ、トリオのやり取りや表情、ゆるいMCなど家でCDを聴いているのでは決して伝わらない「生感」は、何ものにも返られない、と。
ノースリーブにズボンをはいた山中さんが登場。昼から「コンベンション」で演奏しているので少々疲れていて、静かに落ち着いて始めたいとのこと。が、1曲目は、「In A Mellow Tone」。タイトルは「メロー」だが、まったく静かでないスタート。毎日のようにクラブで演奏していた飽きてしまった曲をアレンジしたという。ドラムの音が目の前で響く。続いて「Living Without Friday」。ベースソロに続いて、曲芸のようなドラムソロが見せてくれる。手を背中で交叉させ、左右を逆に叩き続ける。
3曲目は「Cry Me A River」。静かに忍び寄るベースソロの太い低音が気持ち良い。ピアノも豊かな大きさが感じられる。4曲目は新しいアルバムに収録された「He's Got A Whole World In His Hand」で、必死に耳を傾ける。ポップな明るいメロディーで、思わず首が左右に揺れていく。低音も心地よい。MCによれば、CDに収録されたのとは違う「Tokyo Jazz バージョン」である。5曲目は「Berverly」。デビューアルバムの冒頭がこの曲だった。「私の古い曲」とのこと。CDに収録されたとは違う、複雑な広がりを持ったソロパートになっている。
最後はテーマソング「Yagibushi」である。おどろおどろしい、予感感のある出だしから、ベースが盛り上がりをつくって、一旦収束したかと思うと一気に爆発スタート。ご機嫌である。「よりアグレッシブ」にアレンジした、とのこと。アンコールは短めの「Just In Time」で、『When October Goes』に収録されているのより速いテンポ。
余韻に浸ってからお店を出る。お店から配られたじゃがいもやニンジンの入った「とれたて有機野菜」をもって家に帰ると、やけに目がさえている。お酒が足りないのかと、補充してみても眠れない。やっと寝たけれど、朝の目覚めも気分が違う。どうしたのだろうか?
