ベテランStan Hopeのピアノで幸せな秋を
ジャズは娯楽だ。もちろん、良い意味で。人間や世界の真理を探求するために聴いているわけではない。演奏する人が探求するのは勝手だが。

1940年代から演奏を続けているピアニスト、Stan Hopeの『Put On A Happy Face』(Savant)を聴いて「幸せ」な気分である。そのジャケットの優しそうな「おじいちゃん」の姿に魅かれて買った。
若さ溢れる超絶技巧もいいけれど、60年にわたるキャリアから滲み出る余裕と匠に浸りたい秋にふさわしい1枚だと思う。楽しんで心地よく、「音楽の神様」はちゃんと微笑んでくれる。自らの活動力を増大させる「善」な音楽である。スピノザは言っている「善をあらゆる種類の喜びならびに喜びをもたらすすべてのもの...と解する」(『エチカ』第3部定理39備考)と。
Stan Hopeは、米ニュージャージーのアトランティック・シティで育ち、10歳からピアノを始めた。カウント・ベーシー楽団のクラブ演奏などを聴き、「これだ」とジャズに目覚めたという。
メンバーは、Ray Drummond(b)、Kenny Washington(ds)で、1、2、7にだけHouston Person(ts)が参加している。録音は2004年で、技師はRudy Van Gelderである。
収録されているのは以下の通り。
1、R.D.'s Blues
2、Then I'll Be Tired Of You
3、My Ship
4、East To Love
5、Put On A Happy Face
6、They Can't Take That Away From Me
7、I'm Afraid The Masquerade Is Over
8、Somewhere In The Night
9、Medley: I'll Never Stop Loving You - The Island
10、K.W. Groove
しょっぱなから楽しくなるブルースである。Hopeのオリジナル。サックスが印象的。続いて2のやさしいピアノの音が心地よい。確かに笑顔がこぼれる。3はトリオによるバラード。4でC. Poterの名曲かと思えば、5は有名だがあまり演奏されているのを聴いたことのない作品に。演奏はタイトルの文字通り恵比須顔になりそうだ。
6はベース・ソロがいい。7では、1939年の音楽を4人がうまく調理している。冒頭から響くサックスが素敵である。8は夜の気だるい感じだろうか。ピアノが優美な雰囲気を。9はピアノのソロで、Hopeの音色を堪能できる。最後はHopeのオリジナルで締める。ピアノの音を追っかけていると身体が動き出しそう。
涼しくなって部屋で音楽を聴くにふさわしい季節。
