2006年1月11日

ポール・オースター『The Book Of Illusions』と身も蓋もなし

 ポール・オースター(Paul Auster)の『The Book Of Illusions』(Picador)を読んだ。無声映画時代に活動し、歴史の中に消えた映画監督をめぐる小説だ。サスペンスとミステリー、といっても読み終わった後には、そこはかとない寂寥感が残る名品である。
 そして、最後に梯子を外される。読んできた小説をめぐる「種明かし」もされるけれど、さらに謎(?)は深まる。

 死に満ちている。妻と子供の死。映画監督の死、その妻の死、女性の死、そして主人公の死(?)失われたはずの作品も死んだといっていい。そして、よみがえった映画があるように、よみがえることを暗示する未発表の(=死んだ)映画もある。そしてよみがえることへの期待を残してお話は死は終わる。

 オースターの小説は、すっきりとした結末(いわゆる、「ちゃんちゃん」)とはならない。しかし、その身も蓋もないからこそ、簡単に癒されるような安物小説とは違った魅力に満ちている。

 ちなみに私は英語が得意でない。けれど、オースターの英語は分かりやすく、言い換えや繰り返しもあるので辞書無しで一気に読める(=読めたような気がする)。もちろん、そのあと名訳である柴田元幸氏の翻訳を見て、反省し、再確認するのが癖になっている。ただ、『The Book Of Illusions』の翻訳は無いので、いずれ翻訳が出た時に再読し、まったく違った印象を持つような気もする。

 ポール・オースターは、1947年ニュージャージー生まれの小説家。「ニューヨーク三部作」で有名。新潮文庫にいくつか翻訳が収録されている。

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