2006年2月25日

ドイツらしからぬピアノ・トリオで休日の朝

 新譜は楽しい。もちろん、初めて聴くCDがすべて新譜である。新発売ではない。
WagnerMorikeBeckFinally.jpg
 年末に買ったWagner/Mörike/Beckの『Finally』(Negel Heyer Records)である。かしこまって黙って、音楽を黙聴する風習の元祖ドイツのピアノ・トリオだけれど、そうとは思えない明るさばっちり。イタリアのようだ。

 昨晩のお酒が残りつつも、家事の合間に部屋にこもり、大きめのボリュームで聴く。抜群な休日の朝。外は良い天気で、午後は散歩に出よう。

 ところで、ポスト・モダンとは、もともと建築の世界で言われ始めた概念である。過去の様式を組み合わせ、引用した反様式の建築で、歴史が一方向へ変化(進歩)するという「モダン(近代)」を批判した。(モダン)ジャズも一方向に変化するだけでない、多様な様式(スタイル)がある。
 ポスト・モダンな建築が利用者にとって使いにくかったり、メンテナンスが大変だったり、雨漏りしたりするように、何だかなあ、というジャズがあってもいい。一方で、今でも「モダン」な建築がどんどん建てられているように、一斉にすべてが入れ替わってしまう訳ではない。それは良い悪いではなく、発注者の趣味である。話題になるポスト・モダンな建物に住みたい人もいれば、機能性一辺倒の家に住みたい人もいる。

 「新譜と言うだけで、旧態依然のスタイルのまま目先を変えただけ」と言われそうだけれど、気にしない。心地よく楽しみたいときに嬉しいピアノ・トリオだ。どう考えても「ポスト・モダン」とは思えない。ばっちりモダン。全体に躍動感があって、ピアノはフレーズで、細かい芸を見せてくれる。

 メンバーはThilo Wagner(p)、Wolfgang Mörike(b)、Gregor Beck(ds)。Wagnerは1965年生まれ、5歳からピアノを始め、ビッグバンドなどで活躍。Mörikeも1965年生まれで、音楽大学でオーケストラを学んでから、ジャズに転向した。Beckは1958年生まれで、ギターからドラムに転向した。いずれもヨーロッパに遠征してきたアメリカのジャズ・ミュージシャンとの共演も多数。

 収録されているのは以下の通り。

1、Finally
2、I'll Be Seeing You
3、If I Were A Bell
4、My Romance
5、O Sole Mio
6、What Is This Thing Called Love
7、When You Wish Upon A Star
8、I'm Old Fashioned
9、Zelim
10、All Of You
11、Everything Happens To Me
12、Pennies From Heaven


 冒頭はWagnerのオリジナルで、最初から「ファイナリー」だけれど、軽やかで楽しみなスタートをきる。明るいのである。2でもピアノの音が印象的。転がるようなピアノが気持ち良い。3はお馴染みのスタンダード。印象的なメロディーを軽やかにピアノがうたう。めくるめくようにフレーズを楽しむ。ベース・ソロもお腹に響く。4では一転、優しい恋心で始まり、成就したような喜びに満ちる。
 5では弾けるようなベース・ソロが嬉しい。6のシンバルで始まるドラマチックな出だしで期待が高まる。対照的にピアノは、きちんとメロディーを刻む。7は優しいメロディーがちょっと崩されて響く。ピアノとドラムの掛け合いもいい。休日の朝である。8でも鍵盤の音が耳に残る。9はMorkeのオリジナル。今風である。
 10はPorterのスタンダード。ゆっくりと音を慈しむように始まる。素敵である。転がるピアノ。弾けるベース。11は何があっても気負わない。心休まる演奏だ。最後はウキウキピアノで終わる。極楽、天国である。

 さて、風呂を洗おう。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kenyama.net/mt-tb.cgi/241

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。