Blue Note蒐集の記録と良い時代
一歩間違えると、単なる自慢話である。
でも、良い時代だったんだなあ、と羨ましくなる。整形外科医でジャズ評論家の小川隆夫さんによる『BLUE NOTE COLLECTOR'S GUIDE(ブルーノート・コレクターズ・ガイド)』(東京キララ社刊、三一書房発売)を読み終わった印象だ。
全体のトーンは「自慢話」ではない。ある世代の「ジャズ好き」の記録である。
なんだか人生の終りになってから、「楽しき日々」を回想しているような「諦念」も漂う。小川さんは1950年生まれだから、まだ「枯淡の境地」といったお歳ではないはず。近年大病されてきちんと記録を残しておきたい、ということなのだろうか。
前半がブルーノートの歴史と、本書のメインである小川さんの「完全コレクション」までの道のり、東芝EMIの行方均さんとの対談をはさんで、後半が同レーベルのリスト。
父親が開業する病院の近くで開業したヤマハの渋谷店。初めて買ったブルーノート盤がバド・パウエルの『The Amazing Bud Powell Vol.1』だという。1966年の出来事。渋い。
以来、国内だけでなく、アメリカで各地で買い集めたコレクションの記録である。ジャズ喫茶のある新宿にある医大を選び、聴くだけでなくギターで舞台にも立つ学生時代、経済的に恵まれ、早い時期(1974年)にジャル・パックで初めてアメリカ旅行に行き、山のようにレコードを買う話し。ちなみに、小川さんのお父様も映画が見たいので新橋の医大を選んだという。蒐集するに当って出会った人たちとの交流などなど。
1952年生まれの中山康樹さんによる自叙伝『スイングジャーナル青春録』(大阪編、東京編、径書房)と同様、良い時代だったのである。
中ほどの見開きにある「コレクターの心得10ヶ条」が面白い。探していたレコードがあったら、次があると思わず、迷わず買え! など、決して、レコードを集める時だけの心得ではない。古本屋を回る時も同様である。
そして、棚からジャズを聴きはじめた時に聴いたまま、そのあと余り聴かなかったブルーノートのCDを取り出すのである。
