2006年9月13日

山中千尋さんの新作と曲順、手の内

 発売になった山中千尋さんの新作『Lach Doch Mal』(Verve)のDVDつき初回限定版を買ってきた。HMVの特典ラベル(写真右)つき。待望の新作だ。iTMS(今日からiTS)のダウンロード販売でひと足早く聴けたのはいいけれど、やはりCDという物的な証拠が欲しいもの。街頭で演奏する(?)楽しい写真など、ジャケットも嬉しい。DVDは4分強だけで。ちょっと、うーん。
LachDochMal.jpg
 で、一聴。タイトル通り「とにかく笑おう」である。曲順はこうでないといけない。

 前作『Outside By The Swing』では、冒頭1曲目で「うーん」となり、2曲目の「I Will Wait」で嬉しくなった。今回は冒頭1曲目から嬉しくなる。明るく、楽しく、ズンズンズン。

 バンジョーにギター、エレピと様々な音色が盛り込まれ、中島みゆきが無いのが特徴だ(?)。そして、彼女の個性、一聴するとそれが誰だか分かるような音色、フレーズ、山中節が嬉しい。

 メンバーは、澤野工房時代の『When October Goes』や『Madrigal』と同じLarry Grenadier(b)とJeff Ballard(ds)。それも前作『Outside By The Swing』と違う優しい雰囲気を醸し出している。他に、John Carliniが1と5でギターを、3でバンジョー。

 澤野工房の3作目で「この先、山中さんはどこに行ってしまうのだろうか」と思ったけれど、今回のユニバーサル2作目を聴いて、「一旦戻ってきたのだろう」との思いを強くした。早速の次の3作目は、きっとまた違うところに「行って」しまうのであろう。楽しみである。

 収録曲は以下の通り。オリジナルが4曲である。

1、Quand Biron Voulut Danser
2、Sabot
3、Serenade To A Cuckoo
4、RTG
5、The Dolphin
6、Night Loop
7、One Step Up
8、Lach Doch Mal
9、Liebesleid(愛の悲しみ)
10、Mode To John
11、What A Diff'rence A Day Made(縁は異なもの)
12、That' All

・初回限定版のDVD=「One Step Up」のビデオクリップ。

 肝心の順番である。『Outside By The Swing』とはうって変わった冒頭1曲目の1。これである。これを待っていたのである。買って封を開いて、プレイ・ボタンを押す。最初に出る音で嬉しくなれば、ずっと嬉しい。指先から生まれる素敵なメロディに笑顔がこぼれる。ヨーロッパのトラディショナル曲だという。
 2曲目の「Sabot」はオリジナル。メロディが「山中」で、右手の細かいフレーズと左手の低音も「山中」である。いいなあ。タイトルは、飛ばす(tobas)、都バス(?)をひっくり返したのか。サボるロボットではないだろう。

 3はベースの印象的なイントロから始まるRoland Kirkの曲。力強く叩かれるピアノのメロディーとソロが、夜のバー、洋酒のコマーシャルのよう。これからの季節にぴったり。バンジョーが印象的。ベース・ソロでは、おもわず止めた煙草をくゆらせたくなる。最後は「仮面ライダーV3」か?と終わる。4はライブで何回か聴いているGeri Allenの曲。最初の印象的な連打が背中に響く。スピード感と逸脱感が適度に混合。本作前半の山場だと思う。5は一転し、クールダウン。ギターと爽快なメロディーが心地よい。ボサ・ノヴァ。Luiz Ecaの作品。くっきりと輪郭を見せる易しいピアノ。

 ここからオリジナルが3曲続く。6から後半戦スタートで、一気にソロとリズムが絡み合う。左手とベースが音を追い立てていく。7では、フェンダー・ローズの音で攻め立てられ、繰り返される低音が違った山中ワールドを垣間見せる。この曲が冒頭にあったら、考え込んでしまいそうだった。で、8は45秒のタイトル曲。ソロ・ピアノのラグ。滑り抜けるよう。懐かしいような、新しいような。

 9はメロディが印象的なFritz Kreislerの曲。口笛にぴったりである。変拍子で、ソロが積み重ねられていく。何といっても「愛の悲しみ」であるから、情感と記憶が絡みつくのである。そして、急転直下、テレビのサスペンス劇場を聴いているような劇的展開に。10は、McCoy Tynerがコルトレーンに捧げた曲だ。埋め込まれた「山中節」にニヤリとする。ライブで聴くのが楽しそうだ。期待。

 さて、11は、有名なスタンダードをオーバー・ダビングとアレンジで不可思議な曲に仕上げている。エレピ、オルガン等々、入り交じって「縁は異なもの」。終わったかのように、さらに再スタート。ところが、やっぱり縁の切れ目は、すれ違ったまま鋭い断絶で終わる。うーん。最後は本当にクールダウン。ゆっくりと呼吸を調えるスタンダードでしめる。極楽極楽な53分19秒。

 トランプのカードを机の上に広げたように前半と後半で、さまざまな手の内を見せてくれた山中さん。これからも更に手の内をさらして欲しいものである。

 おまけのDVDは、4分強と短く、「One Step Up」をピアノで演奏する。暗い画面で、乾いた雰囲気。固定的なカメラアングルで鍵盤、表情、ピアノ内部を見せる。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」のように印象的ではある(えっ?)。前回のようにアルバムの録音風景ではなく、作品として撮影されているが、ちょっとアルバムの雰囲気にあうかどうかは疑問。

 さて、今日はこれから発売日の販促イベント。楽しみである。

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