2006年12月23日

ピアニストの仕事の一端をのぞく

 詩を読むことは、めったにない。ゆえに、詩の朗読を聞くことなど皆無である。しかし、山中千尋さんがバックでピアノを演奏するとなれば話しは別。
 作家、島田雅彦氏の詩を女優、小島聖さんが朗読するイベント「ポエトリーリーディング×Jazz」(東京FM主催)が22日、渋谷・JZBratで開かれた。クリスマス直前の金曜の夜である。入れ替え制だけれど、ついついジャズ・ライブのように「通し」で予約した。

 舞台にはPiano Barが装着されたKAWAIのピアノとベース。椅子が2脚。客席は4〜50人だろうか、「クリスマス」という雰囲気の人たちもいれば、そうでない人たちも。まずは赤ワインをボトルで注文。今週は節酒したので、久しぶりの大量のお酒である。ガブガブ。そして、ショーが始まる。

 さて、結論を言おう。中途半端なイベントで何を楽しめばいいのかが分かりにくい。チャージに5250円をとり、食事と飲物をそれなりの値段がする。そのためなのか、実質1時間20分の間に、演奏、朗読、雑談と盛り込みすぎた。3人がいるだけで「商品」になるような「アイドル・タレント」ならともかく、ファーストもセカンドも盛り上がることなく終わる。島田氏の詩が凡庸だとか、小島さんの朗読は平板だとかは言わない。

 結局、いつも聴き慣れた山中さんが、どんなことをしているかだけに興味が集中する。

 山中さんは、ニューヨークで詩の朗読の手伝いのような仕事を1年やっていた。チェルシーで、のりのりのイベントで、賑やかだったという。彼女のニューヨークので生活の一端を垣間見れたということで満足しよう。

 冒頭はベースのMark Tourianと二人で登場。ゆっくりと鍵盤を刻んで始まる。島田氏が登場し、人間は70%が水であると切り出し、ボクサーは水のグルメだとか、「どのような器に水を入れて飲むのでしょうか」と話す。続いて、「クリスタル」と小島さんが朗読を始める。山中さんはピアノを弾く。そして、「乾杯」。シーン。もちろん、「ユルい」イベントは大好きである。

 続いて、小島さんが「古代への憧憬」を朗読。照明は凝っている。山中さんは、ピアニカで不思議なメロディーを奏でていると思えば、「Balkan Tale」(Living Without Friday収録)で、ベースとのデュオ。確かに砂漠に流れる音楽のように聞こえる。「Confirmation」へと続く。

 ちなみにピアニカは、Hohner社のメロディカで、400ユーロ。高級品である。ブルース・ハープのハーモニカのメーカーである。

 3人の雑談が始まる。

 山中さんは小さい時になりたかったのが、ドナルドダックで、床屋の前にあるぐるぐる回る看板(?)にもなりたかった、とのこと。島田氏に「1910年代だったら、ダダイストになれた」と褒められる。島田氏がイランでセクシーを感じてうれしかったとか、小島さんがパリのマレ地区が好きだとか雑談は進む。

 「本を読むのは好きだけれど、言葉が好きならピアノを弾いていない。音楽は何にもかえ難い」という山中さんが印象的。

 作「家」と詩「人」の違いに島田氏は言及する。家のつく作家はお金を稼ぐためで、「人」の詩人は人の生き方、様態のことで、詩人で食べていられるのは日本に2人しかいない。仙人、俳人、廃人、老人の仲間である、と。詩を書きたくなるのは、そんなお金を稼ぐ気分でない時だと。

 「タイムマシン」を小島さんが朗読。カウンターに座った島田氏が合いの手をいれる。

 次は、山中さんとMarkのデュオ。何よりも落ち着いて聴けるので嬉しい。歌いながら、まるでキース・ジャレットのように弾く。Paino Barのエフェクトも楽しく、時折、挟み込まれる山中節にニヤニヤ。

 続いて、二人の朗読のバックで、PianoBarをつかって、クリスマス・ソングである。そう、Piano Barの赤と緑の点滅するランプは、クリスマスのイルミネーションのようである。ファーストが終了。

 特段目が覚めるようなフレーズも、考えさせられる文句も無かった。何だか、安い芝居を観ているようだ。脚本家、企画人が悪いのか。3人とも「お仕事」でやっている。

 なぜか無くなってしまった赤ワインのボトル。Four Roses Blackをダブルで頼む。節酒はどうした!

 21時をまわって、セカンドのお客さんが入ってくる。やはりクリスマス、金曜の夜は遅い。通しの人はほとんどいない。

 22時すぎ、山中さんとMarkが二人で登場。ディズニーランドのように舞台は始まる。いいなあ。島田氏の前口上、小島さんの朗読など段取りはファーストと同じ。3人の雑談の内容は、更に「居酒屋談義」のようになる。島田氏はリハーサルに来なかったようだ。

 詩の朗読のバックで演奏する、前後で演奏する。メインは詩、言葉である。言葉で何かを伝えることを拒否しているピアニストが「仕事」で演奏する。それはそれでめったに見られないゆえ、楽しい。

 さて、世間はクリスマス。騒ぎの中心日の24日、山中さんはお仕事だそうで、ご苦労様である。

 この日の模様は、東京FMの1月7日の朝の番組で一部放送されるという。通路にはテレビカメラもある。

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