ジャズと新書ブーム
相倉久人さんの『新書で入門 ジャズの歴史』(新潮新書)を読んだ。1970年代以降、ほとんどジャズについて発言しなくなった相倉さんの珍しい新刊である。これも新書ブームのおかげだろう。
当然、ジャズ入門書のような「ジャズ系新書」も多い。ブームになった2005年以降出版された新書を書棚から集めただけで、本書を含め10冊あった。もちろん、実際に出版されたすべての新書を買ったわけではないので、すべてとは言い切れないけれど各社からよく出ているものだ。
一昔前の新書コーナーには、岩波、講談社現代、中公くらいしかなかったけれど、最近の書店は、聞いたことも無いような出版社までが新書を出している。テーマも幅広く、スラヴォイ・ジジェックのインタビューの新書もある。コンパクトで手軽、短時間で読める。知識が増えた気にもなる。「新潮新書」のようにタイトルがすべて! のようなシリーズもある。
さて10冊の紹介。
1、相倉久人『新書で入門 ジャズの歴史』(新潮新書)
相倉さんは1931年生まれ。文字通り、ジャズの歴史をたどる。洗足学園音楽大学の授業がベース。面白いのは「モダン・ジャズ」の終焉を分析したあたり。
ニューオリンズ、スイング、バップ、ビバップ等々、進歩してきたジャズが、フリージャズを一気に加速させたコルトレーンの死で終わったという。それに対しマイルスは、ジャズのメインストリームがフリーに行ってしまったことは間違いだが、ジャズがコルトレーンと討ち死にしてしまった以上別の方向に進むしかないと、独自の道を歩んだそうだ。ふー。
残念ながら、読み物としては面白いけれど、これを読んでジャズを聴きたくならないのは難点。
お勧め度:☆☆☆(☆5つが満点)
2、中山康樹『挫折し続ける初心者のための最後のジャズ入門』(幻冬舎新書)
大活躍で10冊のうち、3冊が中山さんの本である。1952年生まれの元「スイングジャーナル」編集長。
これは先日のエントリーでもちょっと触れたけれど「ジャズ道」の本。
ただ、芸が細かいというか、挑発的というか、中山さんの個性的な文体で、意識的に敷居を高くしており、これを「本当に」最初に読んだ人は困ってしまいそうだ。とは言っても、実際にジャズ本を買う人はまず初心者でないから、これでいいのだろう。
お勧め度:☆☆☆(☆5つが満点)
3、中山康樹『ジャズの名盤入門』(講談社現代新書)
「名盤」50枚の紹介。ジャズを好き・嫌いでなく、耳のレベルを上げ、本質を理解するために必聴な50枚とのこと。
それぞれの紹介文は、勢いがあって読みやすく、そのうち何枚かを聴きたくなる。中山さんの本領発揮だ。
お勧め度:☆☆☆☆(☆5つが満点)
4、中山康樹『ジャズ"ライブ名盤"入門』(宝島社新書)
それまで軽く扱われてきた「ライブ盤」に光を当てようという企画。「ジャズはライブがいちばん」の筈ではないか、というわけだ。
選盤の趣味によるのだろうか、3と違ってあまり面白くない。どうも「ライブ感」(勢い)がないというか。
お勧め度:☆☆(☆5つが満点)
5、常盤武彦『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川ONEテーマ21)
1965年生まれの常盤さんはカメラマン。当然、本書はカラー写真がたっぷりで楽しい。今活躍中のアーチストやライブ・ハウスなどを紹介したガイドブックで、ニューヨークに行った気になれそう。
お勧め度:☆☆☆☆(☆5つが満点)
6、岩浪洋三『ジャズCD必聴盤! わが生涯の200枚』(講談社+α新書)
1933年生まれの元「スイングジャーナル」編集長。業界の大御所である。シンプルで短く、不思議なリズム感のある文体が個性的だ。
本書の200枚は「自分にこだわった」ので、名盤ではないという。ところが、「自分」との出会い、思いがあまり伝わってこない。
それぞれ1ページで写真と文章で構成されていて、文章が短く、舌足らず。CDを100枚にして、文章を長くして欲しかった。
お勧め度:☆(☆5つが満点)
7、原田和典『世界最高のジャズ』(光文社新書)
原田さんは1970年生まれの元「ジャズ批評」編集長。ジャズ・ミュージシャン21人余を軸に、ジャズ全般を紹介したボリューム感のある1冊。ページ・レイアウトとフォントのせいだろうか、一見すると、文字ばかりならんで、圧迫感が感じられる。もう少し、字間を詰めた方が読みやすいか。
でも、ジャズへの熱い思い=愛が感じられて一気に読んでしまう。登場するディスクをついつい聴きたくなってくる。
お勧め度:☆☆☆☆☆(☆5つが満点)
8、小川隆夫『はじめてのブルーノート』(ON BOOKS 21)
小川さんは1950年生まれ。本書は名門レーベル「ブルーノート」を100のコラムで紹介する。「ブルーノート」をテーマにした類書は山のようにあるけれど、読みやすさから言えばお勧めだろう。新書で2ページというのは、新書というフォーマッチにぴったりな分量で心地よい。ただ、ジャズの予備知識無く読んでもよく分からないかも。
お勧め度:☆☆☆(☆5つが満点)
9、澤田駿吾『通になる! ジャズの聴き方楽しみ方』(パンドラ新書)
澤田さんはジャズを教える東京・代々木のルーツ音楽院の学院長でギタリスト、1930年生まれ。
入門書というより、澤田さんの昔話が楽しい。日本のジャズの歴史を扱った第三章がおすすめ。用語集は便利かも。
お勧め度:☆☆☆(☆5つが満点)
10、寺島靖国『JAZZピアノ・トリオ名盤500』(だいわ文庫)
判型は文庫だが、書き下ろしで、その性格からして新書扱い。東京・吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」店主、1938年生まれ。
ピアノ・トリオばかりが500枚(中には違うのや、コテンパンなのも)。すごいボリュームである。もちろん、文章は短い。暗号解読のように読む。
買いたくなる、聴きたくなる度は高い。
お勧め度:☆☆☆☆(☆5つが満点)
風邪は抜けたけれど、花粉症で眼がかゆい。久しぶりのスポーツ・クラブ。クリップ型のiPod shuffleを愛用している。小走りしながら、唐突にHarold Mabernのノリノリ曲が流れると手と顔が自動的に動く。不可抗力だが、ランニングマシン上では危険。

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