2007年8月25日

今も昔も変わらないので(?)、CDは安い?

 最近話題のノンフィクション作品を3冊続けて読んだ。いろいろ考えさせられる内容で、うーん、と唸ってしまう。
 変わった、新時代、変化、改革などなど。ずっと同じことが言われつづけている。以前であれば、一回転する時間が比較的長かったから、気付く前に人生は終わったのかもしれない。ところが回転が早くなり、何度も同じ場面を見ていると、諦念と虚無感に襲われるのだ。

 1冊目は、政治ジャーナリストの上杉隆氏の『官邸崩壊』(新潮社)。
 昨年の安倍晋三政権発足前後から、参議院選挙での惨敗までをたどった「内幕ドキュメント」で、政権の悲惨な「崩壊」過程をたどる

 上杉氏は1968年生まれ。NHK、代議士秘書、ニューヨーク・タイムズ記者をへて、2002年からフリー。本人のブログが楽しい。これまでの「政治記者」とは雰囲気、文体、味付け、スタイルとは違う。読んでいて楽しいのである。前作の『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)もいつか手に取ってみようと思う。

 政府税調会長、大臣、年金等々。短期間過ぎて憶え切れないほどのトラブルを抱えてたこの1年を思い返す。上杉さんは安倍政権(チーム安倍)の特徴を以下のように説明する。

「危機意識の欠如、それはこの政権を覆う共通の空気であった。(中略)誰もが早々と自分とは無関係であると結論付け、第三者の余裕で事の成り行きを見守る。成功に対しては異常なまでに執着するが、失敗が迫り来るとそろって目を瞑る。」

 でも、政権に限らず、大きな組織はどこもそうなのではないかという気もする。行政府のトップがそうでは困るけど。

 ただ、トップの前で各人(各省、局、議員など)が成果を競うような仕組み中で、人はえてしてヒラメ(評論家)になるだろう。

 「成果は俺のもの、失敗はあいつのせい」としたほうが「出世」するようなものだからだ。その時、そんな人を重用しない、馘首する強さ(人を見る目、能力)がトップには必要なのだ。大変だ。
 よってマネージメントは進化(改革)しないといけない。また改革(改造)ですか。何かあれば制度(法律)をいじればいいのですね。ふー、やれやれ。

 ちなみに、どなたかは「曖昧戦略」でもあり、そういった能力は無い(行使しない)そうだ。

 ところで、首相はチック・コリアやキース・ジャレットのようなジャズが好みだそうだ。1954年生まれだし、70年代のフュージョン全盛期に聴いたのだろう。チックの「Return to Forever」 は、1972年である。

 もう一冊は、ジャーナリスト、西岡研介さんの『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)である。「週刊現代」などの連載がベースになっている。同誌がJR東日本のキオスクで発売が中止されたことでも有名。

 西岡研介氏は1967年生まれ。神戸新聞をへて、「噂の真相」で数々のスクープを飛ばした。

 本書が暴くのは、日本国有鉄道の労働組合のひとつで、当初の分割民営反対から一転して賛成にまわった国鉄動力車労働組合のトップだった松崎明氏が、JR東労組(東日本旅客鉄道労働組合)の会長になり、JR東日本の労働組合だけでなく、経営にまで介入している実態だ。
 松崎氏は、革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)の最高幹部の一人とされている。

 興味津々というか、すべて本当だったら恐くて電車に乗れない。不安である。対立する労働組合同士の抗争が重大な列車事故を起こさないことを願うばかりだ。
 民営化20年などと浮かれている場合ではなかろう、ということ。借金が結局どうなったかを見れば、JRの経営者が立派であるかのように重宝されるのは滑稽である。それでいいなら、駅前のまずいそば屋も立派である。

 同じようにこの20年の闇を見せてくれた3冊目が、元特捜検事で弁護士の田中森一氏の『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』(幻冬舎)だ。

 田中氏は1943年生まれ。厳しい家庭環境から大学在籍中に司法試験に合格し、大阪地検、東京地検特捜部で汚職事件などを担当した辣腕検事。退官後は、バブル経済まっただ中、暴力団や仕手筋等々、闇の世界に足を踏み入れていく。

 バブル時代の金銭感覚は、使い方がケタ違いで冗談のようだ。それだけでも読みモノとして面白い。
 本人は時代に流され、「反転」したのだけれど、時折顔を見せる言葉や発想の奥に見える何かはやはり間違っていると思う。
 全体が自己弁護に見えてしまうのは、今になってからの視点なのだろうが。

 ただ、捜査の「遣り口」や事件の作り方など、検察や犯罪の現場にいた人でしか見えてこない場面で、その迫力はすごい。大丈夫かいな? である。

 いずれにしても、「今」そのものが、結局数十年前からの蓄積と経緯からなりたっているのであり、「景気」や「政局」を、こと面白く解説して見せる人たちの背後にある「陳腐」な、そして「無屈託」なおしゃべりだけに、それゆえ高いお金が支払われることを考えると、音楽のCDの安いこと。もちろん、本の印税など微々たるものだ。

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