帰ってきた「山中千尋のジャズドリル」@メグ
10月21日、吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」で開かれた2006年1月以来の2度目の「山中千尋のジャズドリル」に行ってきた。前回、「二度とやりません」と宣言していたけれど、なぜか復活。
店主の寺島靖国さんだけでなく、ジャズ評論家の岩浪洋三さんも参加され、「鼎談」のように話しは進む。今回も高級スピーカーにMacをつなぐ「贅沢」なサウンドだ。
開演(?)の1時間前、2000円のチャージを払う。店内にはすでに10人以上集まっている。ハートランドのビール(730円)を、まずグビグビ。19時前には40人くらいの大盛況。結局、50人くらい集まったようだ。
定刻を5分過ぎた19時5分ごろ、メガネをかけ、黒ずくめで、本人いわく「ジューイッシュ・コスプレ」の山中さんが登場する。拍手。椅子の配列に指示が出る。
寺島さんがまず、たくさん集まったことへのお礼の挨拶、「大阪、仙台、海外からも」で、山中さんも挙手。
ジャズドリルなので「テスト用紙を配ります」と。
講義は「キース・ジャレットは、なぜすばらしいバラードを演奏できるか」から始まる。まずはお店にあったCDを聞き、続いてYouTubeでみつけた映像を観賞する。すてきなMC(ここでは書けません。そういったフレーズをblogに書くと変なコメントやトラックバックが集まります、きっと)で、山中さんいわく「海外生活で必要な言葉が全部は行っています。的確かつ簡潔」。
スーツケースから何枚かLPを取り出し、Denny Zeitlin(p)のトリオ『Live at the Trident』からGershwinの曲を聞く。山中さんは緑の綺麗なボトルのハートランドをラッパ飲み。演奏については、寺島さんが「すかし過ぎ」、メロディーを聴きたい、と辛い採点。
そうかと思えば、山中さんは、280万円のヴァンギャルド・スピーカーを「正露丸のパッケージのラッパみたいで、原っぱに置いて昼のサイレンにぴったり」とコメント。マイクの声もそこから出ているが「牛の鳴き声」だと。
続いて、Freddie Hubbard(tp)のアルバムからピアノストを当てるクイズで、「Misty」を聞く。ふくよかな感じのトランペットが印象的。
山中さんは「私は、ジャズおたく上がりのピアノスト」で、楽器の出来ない人は「オタク」になると言うと、すかさす寺島さんは「ジャズに詳しくなると、弾きたくなる」と反論。そこで、岩浪洋三さんが登場、19:35。
寺島さんが、「50年代の古きよき時代...」と話しかけると、山中さんが「古いだけでしょ!」と遮る。岩浪さんは「そんなこと言うのは、古い人間だけでしょ」と、山中さんに味方する。寺島さんから「どっちの味方」と声があがる。
立て続けに、Michael Brecker(ts)が守りに入った話しや、Wayne ShorterやBob Hurstの好き嫌い、Smileの訳語、ライブ会場での本人のCDを流す失礼さなどなど3人の雑談が続く。ゆるさがドリルの魅力である。山中さんの「ジャズは誰でも抱きしめてくれる音楽ではない」という名言も出た。
3人の鼎談も続く(?)
山中「次に生まれてきたら何になりたい?」
寺島「やっぱり、ミュージシャンになりたい」
岩浪「しょうがないのでジャズ評論家になった。本当に映画評論家になりたかった」
山中「私は消防車、床屋のぐるぐる」
山中「ジャズを聞いていて、人生で一番嬉しかったのは?」
岩浪「お酒がうまく、気分が爽快になること」
寺島「女性が美しく見えること」
寺島「Herbie Hancockが分からない。かみ砕いて説明して欲しい。熱くない」
山中「熱いですよ」
寺島「Herbieを分かって、死にたい」
山中「ピアノのタイミングが飛ばして、時々遅れる。あうと好きなる」
山中「ジャズ評論家になってよかったのは?」
岩浪「モテる。秋吉敏子のおっかけから始まったんだ」
寺島「演奏家にとって、評論家は?」
山中「存在していない。良く書かれようが、悪く書かれようが気にしない。アルバムを作ったら終わり」
寺島「自分のレーベルからアルバムを出して評論家に何と書かれるか気になった」
山中「青いなあ! でも、いつかお二人に私のアルバムのライナーをお願いします。」
鼎談本の刊行を希望したい。
20時過ぎ、Mac Book Proをつなぐケーブルが到着。前回も買ってきたが、今回も。同じ方が買いに行かれている。お疲れさまです。
早速、MacBookProをつないで、サックス・ソロの「All The Things You Are」を聞く。山中さんがピアノをメロディーをたどる。息の上がりそうな演奏だ。実は、Chris Potterのコロンビア大学での演奏だった。
早速、「Chiris Potterはただ者ではない」という声や、「ロリンズに似ている」、「存在感はあるが、音楽的でない」など意見続出。
山中さんいわく、途中から数字の組み合わせているような演奏で、学生は面白いかもしれないが」とバークリーで教えていることに話しが飛ぶ。
渡辺貞夫を聞き、続いて「こういうのがお好きでしょ」とHank Mobleyの『Dippin'』から「Recado Bossa Nova」。
寺島さんいわく、「ジャズ喫茶を潤わせてくれたアルバム。みんな幸せだ」。はい、私も大好きです。
ところが、アメリカのミュージシャンはまず、この曲を知らないそうだ。「Cleopatra's Dream」と同じ。もったいない。
ニューヨークの小話も面白い。
高齢で、Jim Hallは、ビレッジ・バンガードの舞台に上がるのが一苦労で、さらに演奏が短いと女性店主に怒られたり、そうかと思えば、「プーさん」こと菊地雅章さんには、なぜか店主は優しかったりするそうだ。
引き続き、Miles Davisのライブ盤『In Europa』を聞く。「Autumn Leaves(枯葉)」だ。トランペットが、アヴァンギャルドから突き刺さってくる。
さらに、作家、音楽家の中原昌也さんによるトッド・ラングレンへのトリビュートが、ぎんんぎんと流れる。「イエーイ!」とご機嫌な山中さんの横で、寺島さんの顔をフリーズ。素敵なコントラストである。今後中原昌也がメグで流れることなどまず無いだろう。
寺島レコード第一弾『Alone Together』の宣伝も忘れない山中さんは立派。もちろん、12月のご自分のライブ、DVDの宣伝も忘れない。24日発売のDVD『Live in Tokyo』は、寺島、岩浪両氏にプレゼント。
ちなみに発売中の「Swing Journal」で売れ行き1位は『Abyss』で、9位が『Alone Together』だ。寺島さんはドキドキしながらページをめくったそうだ。ちょっと悔しそう。
21:15。終わりにしたい山中さんを寺島さんが「せめて10時まで」と説得して、一旦休憩。いつのまにか私の手にはバーボンのダブルが。うまい。
手作りの抽選紙で抽選会で再開。26番の男性が当選し、レコードを貰う。後半はどんどん、雑談度が高まり、「ジャケット買い」問題、パットとブラッド・メルドーはジャズじゃない問題、バークリー音楽院問題などなど、各種討論が行われた。
山中さんは「ジャズ喫茶でたくさんジャズを聞いてから、バークリーに行ったので良かった」そうだ。中にはほとんど聞かずに来る留学生もいるらしい。
Wayne Shorterの『Second Genesis』から「The Ruby and the Pearl」を聞く頃には22時半ちかく、さらに夜は更けていくのだった。少しずつ人も減る。朝も来る。
ちなみに、雑誌「Jazz Life」に「ジャズドリル」の連載が始まるとのこと。楽しみである。弾けないけど。

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