2007年11月24日

山中千尋さんの『Live In Tokyo』で、記憶と記録

 早いもので発売から1ヶ月経ってしまった。大好きなジャズ・ピアニスト、山中千尋さんのDVD『Live In Tokyo』(ユニバーサル)である。
LiveInTokyo.jpg
 もちろん聴きに行ったライブの記録で、記憶を確かめるように観ている。会場では見えない細部や角度の映像が嬉しい。

 澤野工房から発売された前作DVD『Leaning Forward』の明るい、軽快な印象とは対照的に、力強い、ノリノリ・サウンドを楽しめる作品になっている。

 映像も対照的。「明暗」。前作の「明」に対して「暗」なのだろうか、舞台に3人が浮き上がるようだ。山中さんも前半と後半で、「赤と黒」の衣装替えをし、もり立てる。カメラワークも激しく動く、手元、表情、鍵盤、ベース、ドラムス。目まぐるしい。
 輝くピアノの表面に山中さんの表情を移して、実際の表情に移るなどパーンにも凝っている。三人の表情のやり取りも客席からは見れない。

 記録とはいえ、実際のライブの曲順とは違っている。前半と後半を入れ替え、終演後観客席を空にして収録した2曲を冒頭に持ってきている。ライブのファーストの4曲目、「Liebesleid」は省かれている。結構素敵な演奏だったと思うのでちょっと残念。

 メンバーは、Jennifer Leitham(b)、Allison Miller(ds)。DVDの収録曲は以下の通り。

1st set
1、I'm Gonna Go Fishin'
2、Forest Star
3、A Sand Ship
4、Take Five
5、RTG
6、Antonio's Joke
7、Impulsive

2nd set
8、Outside By The Swing
9、In A Mellow Tone
10、What A Diff'rence A Day Made
11、Living Without Friday

Bonus track
12、Yagibushi

 1の空気を切り裂くような高音が印象的なスタート。左手もよい。鋭いカメラワークは、目が回りそうだ。5分30秒過ぎからのソロは素敵である。左利きのベーシスト、Jenniferの、片手でベースをグルングルン振り回してしまいそうな力強さが伝わってくる。恐いくらい。
 2は、Allisonがベルを鳴らし、ベースが音を刻んで、CD『Abyss』収録の演奏より楽しい滑り出し。ピアノももちろん力強く、ご機嫌である。

 3以降は聴いた演奏の記憶を確かめる作業になる。3ではおとなしく、しっとりとした演奏だったので、情感と表情を楽しむ。4はベース・ソロが印象的だったが、それを楽しく受け流すかのような山中さんの表情がいい。足が跳ねて、口が歌う。5はガッツのあるピアノで、背中の汗の粒が光る。跳ねる、跳ねる。鍵盤をたたき操る姿は圧巻だ。6は大好きな私のお風呂ソング。ベース・ソロで見せる山中さんの笑い声ににやり。7は叫んで弾けるドラマーに釘付けだ。

 8はあやしい出だしが特徴だったけれど「内省と遡行」。「Jazz Life」(2007.12、三栄書房)のインタビューにあるように「内省に満ちた音楽」、「自意識のクレバスにスポットを当てて浮き彫りにした、そんな音楽」の萌芽がここにあるのだろうか。そして、そこう(遡行)から生まれる「多幸感いっぱいのピアノ演奏」が楽しみである。
 ともかく低音がお腹に響いて心地よい。9でも力強いベース・ソロが印象的。でも、やっぱり、あまりメローでないトーンである。それがいいのだ。10は、Rolandのピアノ・バーが全開でグワングワン。CDより速いテンポなのだろう、最後は「キリッ」と終わる。嬉しそうに弾いている表情もよい。11はライブも含めると何度聴いただろうか。それでも、山中さんらしい音と、時折ちりばめられたウフフなフレーズがいいのだ。立って、中腰で、力熱演だ。
 12はライブでも本当に最後だった子守歌のような出だしの八木節で終わる。寝ないけどね。

 映像を見ていて気になったのが、観客席。暗いのでほとんど映らないけれど、最前列はボンヤリと時々見える。静かなのだ。微動だにしない観客席は少々恐い。まあ、コンサート・ホールだから仕方ないが。
 ジャズを聴いて、別の動作をする人(例えば踊るとか)は、ジャズをしっかりと受け止めていないそうだけれど、聴きながら身体を動かすくらいもダメなのだろうか。恐い恐い。

 だとするともっとひどい所業なのだろうけれどに、iPod touchにも入れて楽しんでいる。少し大きめな液晶画面で、ばっちり。電車の中などでニヤニヤしているのは恥ずかしいけれど、時間の有効活用だ。

 対照的な言葉を繋げたタイトルには魅力的な本が多い(ような気がする)。夏目漱石『明暗』、スタンダール『赤と黒』、柄谷行人『内省と遡行』の3冊はどれも愛読書。浅田彰『構造と力』もいいけれど、ジャズの構造やジャズの力の話になると怖いので、あれです。

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