ジャズ本、10連発。聴かずに読め?
ジャズ本を読みながら、ジャズを聴くのが好きである。新書ブームでジャズ関連の本が「続出」するのは続いている。その後も、ジャズ本がたまる。
読み終わって机の上に山積みになった新書を含んだ10冊。昨年の春ごろからのだと思う。
持っているor買ってきたCDを聴きながら、記述に突っ込みを入れたり、納得したり、楽しいのである。
お勧め度を☆で勝手に評価した。5つ☆が満点だ。
1、中山康樹&ジャズ・ストリート『読んでから聴け! ジャズ100名盤』(朝日新書)
言っていることより、言い方と文体、勢いだけで愛読している中山さんの本。本書は、アサヒ・コム・プレミアムにあるジャズ・サイト「ジャズ・ストリート」から生まれた1冊。
執筆者は中山さんのほか、井上章一、後藤雅洋、杉田宏樹、林建紀、原田和典、村井康司、吉井誠一郎の各氏。それぞれ見開きで1枚のアルバムを紹介している。計100枚。ジャズを聴くのではなく、そのミュージシャンを聴け、が合言葉である。
読んで聴いてみたくなり、持っていなかったLee Konitzの『Lee Konitz With Warne Marsh』(Atlantic)を早速買ってきた。
うーん。「即興演奏のもっとも理想的な形」だそうだ。楽しく聴いてしまっているだけの自分に反省。
(お勧め度:☆☆☆☆)
2、後藤雅洋『ジャズ喫茶 四谷「いーぐる」の100枚』(集英社新書)
四谷駅近くのジャズ喫茶「いーぐる」に先日、初めて行った。夜でバーボンを飲んだだけだが、後藤さんの著作に見られる「熱さ」からすると拍子抜けするくらい普通のお店で安心(?)。1967年(学園紛争真っ盛りの時代である)に開店。
本書は、見開きでアルバムを紹介しているけれど、単なる解説ではなく、お店での受容のされようを軸に、後藤さんの思いを投影した1960年代から現在に至るまでのジャズ喫茶・クロニクル。戦後後半の「ジャズ」の生態が浮かび上がってくる。
ちなみにヨーロッパ・ジャズを積極的に紹介する最近の風潮(澤野工房とか)のルーツはジャズ喫茶にあったのだそうだ。
(お勧め度:☆☆☆☆☆)
3、小川隆夫・平野啓一郎『マイルス・デイヴィスとは誰か 「ジャズの帝王」を巡る21人』(平凡社新書)
大活躍の小川さんである。怒濤の新刊はとどまるところを知らない。
本書は芥川賞作家の平野啓一郎さんとの共著。第一部が、チャーリー・パーカーからロリンズ、エヴァンス、ショーター、シュトックハウゼン、マイケル・ジャクソン、プリンスなど21人を交互に紹介、解説で、第二部はマイルスについての対談だ。
小川さんのところはともかく、平野さんの部分がしっくり来ない。なんだか京大法学部のお勉強の成果を聞かされているよう。
(お勧め度:☆☆)
4、小川隆夫『愛しのジャズメン2』(東京キララ社)
ニューヨーク留学時代や雑誌での取材活動を中心に、ジャズメンとの交流を綴った前作『愛しのジャズメン』の続編だ。50人が登場。
一歩間違えると単なる「自慢話」になってしまうところだけれど、各人のエピソードと人柄(?)で楽しく読める。すでに鬼籍の方も多く、貴重な経験は羨ましい限り。
(お勧め度:☆☆☆)
5、小川隆夫『ジャズマンはこう聴いた! 珠玉のJAZZ名盤100』、『ジャズマンがコッソリ愛するJAZZ隠れ名盤100』(河出書房新社)
1年半のうちに、続編を入れて3冊出してしまうのだから、すごい。この2冊は続編の2冊で、いずれも2007年5月と12月の刊行。まとめて1冊でカウントした。ちなみに最初の『ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100』は2006年8月刊。
「スイングジャーナル」誌上でのブラインド・フォールド・テストがもとで、各アルバムへのアーチストのコメントを楽しむ。小川さんの付記もあって、背景やニュアンスが伝わってくる。
(お勧め度:☆☆☆☆)
6、平岡正明『毒血と薔薇 コルトレーンに捧ぐ』(国書刊行会)
新しいデータを求めて読む本ではない。「平岡正明」という1941年生まれの作家を通して、知ったような話を組み換えた「ジャズ」を見るのである。
寺島靖国さんの西日本新聞での書評をめぐる反批判がみどころ。どっちもどっちだけれど、片方の露出が多いのが難点だ。議論以前。
菊地成孔さんが召喚されているのも楽しい。
(お勧め度:☆☆)
7、寺島靖国『疾風怒涛のJAZZオーディオ放蕩生活』(河出書房新社)
まったくオーディオにはこだわらない。耳と感性が劣っているし、部屋に置くスペースもない。高い機械を買うくらいなら、新しいCDを買った方が幸せ。
でも、寺島さんの「オーディオ道楽本」を読むのを好きだ。決して羨ましかったり、欲しくなったりはしない。ジャズ喫茶「メグ」のアヴァンギャルド・スピーカーの音は嫌いだし。
想像を超えた人の話を聞いている、冒険譚を聞いている感じだろうか。
しかし、東京電力に専用の電柱を立てさせてしまうのだから、凄い人である。
(お勧め度:☆☆☆☆)
8、油井正一『ジャズの歴史物語』(スイングジャーナル社)
初版は1972年で、古本屋で購入した。ジャズ評論家の先駆者の一人、油井さんの「歴史書」だ。30年以上前の本で、活字が小さく、びっしり詰まっている感じが懐かしい。ジャズの誕生からコルトレーンまでを辿る。
エピソードも豊富で、文章も読みやすく、これ1冊で60年代までの歴史はばっちり。雑誌などで眼にするほとんどのネタが盛り込まれているよう。
人名作品もあって便利。ただ、個々のアルバムを紹介するディスク・ガイドではない。
(お勧め度:☆☆☆☆☆)
9、田代俊一郎・大久保昭彦・酒匂純子『九州JAZZ喫茶紀行』(西日本新聞社)
福岡を拠点にする西日本新聞の記者3人が書いた「ジャズ喫茶」ガイド。2002年のデータ。
日本独自とされ、今や「絶滅危惧種」のような「ジャズ喫茶」だけれど、本書では、九州だけの20数軒を紹介している。写真と地図もあって、行ったことのないお店だけれど、空気が伝わってきそう。
「ジャズ批評」の「日本列島ジャズの店2005年版」も貴重だけれど、こんな地域色豊かなガイドも嬉しい。
(お勧め度:☆☆☆)
10、鈴木正美『ロシア・ジャズ 寒い国の熱い音楽』(東洋書店)
ジャズはもちろん、アメリカの音楽ではないし、世界各地で受容され、華開いているのは当然だ。ヨーロッパ・ジャズもあれば、日本のジャズもあるだろう。
その規模(マーケット)の大小はあるだろうけれど、「ロシア」である。こんんあブックレットがあることに感動だ。
革命前のロシアから、ソビエト時代、ソビエト崩壊後、と独特の歩みを綴る。「ロシア・ジャズの名盤20枚」と紹介されているけれど、1枚も持っていなかった。どちらかといえば、「前衛系」なのだろうか。
(お勧め度:☆☆☆☆)
早いもので、もう2月。外は大雪である。10センチくらい積もるらしい。確かに底冷えがして寒い。
さて、ジャズ評論家の大御所、岩浪洋三さんが『これがジャズ史だ その嘘と真実』(朔北社)を出した。どんな「ジャズ史」か楽しみである。

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