抜群に面白い二人のライブでブラジリアン
6月8日、武蔵野市民文化会館小ホールで、山中千尋さんとJoao Donato(ジョアン・ドナート)のライブがあった。パイプオルガンが舞台上に鎮座する格式あるホールだが、「ラテン」な二人によるコンサートは抜群に面白く、楽しかった。

前日まで開かれていた富士通スペシャル「100 Gold Fingers」の余韻もさめやらぬまま、二人だけがピアノで向かいあう。山中さんのピアニカもあって、とても印象と記憶に残るライブとなった。
会場は三鷹の駅からちょっとある。うーん、遠い。開演の10分前、18時50分、何とか到着。満員だ。
定時を少し過ぎて、会場が暗くなる。向かって左に山中さん、右にJoaoが座る。山中さんは、夏めいた爽やかな水色のいでたち。ブラジルである。お互いを紹介して、拍手。
さらに「巨匠といっしょに演奏できて、嬉しい」。高校生の時、ガムラン・クラブの発表会で演奏したことのある会場だという。「二人はブラジリアン・タイプなので、イライラなさらないで」とあいさつ。
本当に演奏する曲は決まっていなくて、行き当たりばったりのようだ。どんなことになるのか、不安と期待が入り交じる。
冒頭から、山中さんがしっとりとイントロを演奏すると、Joaoは少し音を叩く。続いて「イパネマ娘」だが、流石である。Joaoのアレンジ(?)による「イパネマ」は、ふんわかと音が盛り上がり、山中さんのピアノを、ばっちり支える。そんな時の山中さんの笑顔がとても素敵である。終わり方を探るというか、いつまでもJoaoが演奏を終えないのも楽しい。
「ジョアンはどこかに行ってしまうので、舞台から降ろさない」とのこと。
30分前に伝えられた曲をJoaoが歌うかと思えば、客席にも歌うようにそそのかす。小技と曲芸がすごい。
続いて、Joaoの言うところの「ヤマハ」である。いや、「枯葉」。そして、ちょっと待って下さーい。ブラジルの枯葉で。山中さんが挑発するとあきれ顔でも、Joaoは応える。
曲はとりあえず、どんどん進む。調子も出てきた感じ。二人の目のやり取りも緊張感と探り合いでたまらない。
新曲「Nagoya」も披露された。前日のゆうぽうとホールでも演奏された最新のお気に入りなのだろう。ちょっとうら悲しい感じの名古屋。演歌のようだ。そのほか、三鷹、吉祥寺、山口と地名好きのJoaoによる地名シリーズを期待したい。
「サンボ・サンボ」で渋いボーカルも披露して、心地よいボサノバな雰囲気で会場を満たしてくれる。更に、山中さんが起立して、ピアニカを演奏。ブラジリアン菜音色の熱演。19時55分。
なぜか拍手が鳴り止まず、アンコールを求めているのだろうか。結局、山中さん本人が「後半あります。15分休憩です」とアナウンス。
ソフトドリンクとクッキーしかない売店で、不貞腐れつつ健全に過ごすが、ブラジリアンでない。
20時15分、暗くなって二人が登場。早速、「歌うカナリア」(?)で、客席だけでなく、山中さんも歌う。貴重で素敵な歌声。そうかと思うと、Joaoの「岩にしみいる蝉の声」。誰が教えたのだろうか。Basyo。まるでJoaoの曲芸大会である。「おやじの海はよー」も出る。「ベサメ・ムーチョ」のような曲が出てくると安心できる。山中さんのアルバム『Bravogue』にある「Vou Deitar E Rolor」も。リズム・セクションのないピアノのみのバージョン。Joaoも歌う。いい声で何だかリラックスできる。そして、客席に歌と拍手を強要する。うーん。
Joaoのピアノと山中さんのピアニカのデュオは素晴らしい。PAも無い。息は合わない。曲名をJoaoが告げるが、山中さんは「?」。でも。ボサノバは始まるのだ。「Fukuoka」という曲なのだろうか。つづいて、二人が、がっぷりよつにやりあう演奏もあって、大満足だ。「Over The Rainbow」では、個性的なJoaoのアレンジにびっくり。もちろん、山中さんも負けない。終わりかと思えば、Joaoが「One More」でもう一曲、ボサで締める。21時8分。
アンコールも勿論ある。ボサノバ、ブルース、ピアニカと満載。手拍子と二人のやり取りでご機嫌。
とっても楽しいプロジェクトで、その時、その二人でなければできない一生の思い出になる演奏でした。お疲れさまです。
長いサイン会の列は、延々と続くのである。
