2009年10月21日

山中千尋さんの新作『Runnin' Wild』は心地よく、抜群だ!

 10月7日、山中千尋さんの新アルバム『Runnin' Wild』(ユニバーサル/ Verve)が発売になった。
RunninWild.jpg
 今年、生誕100年を迎えたジャズの巨匠、ベニー・グッドマン(Benny Goodman)を記念した。08年に発売された『After Hours』に続く企画盤第二弾という位置づけで、山中さん初の管楽器を入れた編成。そして、今までになり「山中節」が楽しめる。
 曲の並びも、一気に聴きたくなる映像作品のようで心地よく、どの曲も楽しめて、聴き込める作品に仕上げる山中さん、さすがである。

 収録曲は、グッドマンさんの名曲だけでなく、山中さんのオリジナルもあって、ウキウキご機嫌なアルバムだ。ちなみに、タイトルは「勝手気ままに」という意味。

 ジャケットの写真は、山中さんのライブで何度も通う東京TUC。舞台後ろのアメリカ本土の地図で、皺の入った紙質が印象的。CDプレイヤーにかける前から、期待が高まる。定価も2800円(税込)で、おまけの映像やナンチャラCDといった規格ではないけれど、リーズナブルで嬉しい。

 メンバーは、ピアノの山中さんのほかに、Janelle Reichman(cla)、Tim Collins(vib)、Avi Rothbard(g)、Yoshi Waki(b)、Luca Santaniello(ds)のセクステット編成だ。
 Janelle Reichmanさんは、クラリネットだけでなく、サックスやフルートも演奏する。山中さんも参加していたビッグバンドDIVAのメンバーだった。Tim Collinsさんは、ニューヨークの音楽大学で教鞭もとる若手ビブラフォン奏者。『Fade』(2008、Ropeadope Digital)というリーダーアルバムもある。Avi Rothbardさんは、山中さんの『After Hours』で、力強いギターを聴かせてくれた。Yoshi Wakiさんは『After Hours』だけでなく、9月のBillboard Live Tokyoでの山中さんのトリオにも参加し、お馴染みだ。Luca Santanielloさんは、イタリア出身でニューヨーク在住の若手ドラマー。

 収録されている曲目は以下の通り。

1、If I Had You
2、Airmail Special
3、B.G.(Bad Girl)
4、G.B.(Good Boy)
5、Slipped Disc
6、Stompin' At The Savoy / Last Call
7、Get Happy
8、Smoke Gets In Your Eyes
9、Tico Tico No Fuba
10、Rose Room
11、Rachel's Dream
12、These Foolish Things
13、Runnin' Wild
14、If I Had You


 1は、ノスタルジックでレトロな雰囲気で始まる。モノラルのピアノ・ソロ。その最後の音と2の最初の音が重なって、尻取りのように一気にゴーンと2が始まる。クラリネットがいい。最初のテーマにぶちのめされる感じ。アルバムの最初はこうでないと。ピアノ・ソロはファンキーで、イェーイ!である。身体が前後に揺れるのだ。耳に残る個性的な音色のギター・ソロが続く。ビブラフォンもかっこいい。クラリネット・ソロもクラリネットらしい優しい感じが耳に残る。そして、テーマに戻って身体がさらに揺れる。わーい、と終了。

 3は山中さんのオリジナル。Benny Goodmanのイニシャルを取っているが、Bad Girl、悪い娘、バド・ガールでもないし、Business Girlでもない。4の良い子と対になっている曲だ。クラリネットのテーマとポロポロなピアノ。優しくて、暖かい彼への思いが伝わってくる。ビブラフォンも静謐に音を刻む。ピアノ・ソロでは温かく、包み込むようにゆったりと鍵盤をたたくのが聴きもの。追いかけるクラリネットも好きである。一転して4に突入。良い少年とは私のことであろう。かろやかなピアノだ。ギターの、そしてクラリネットの、ビブラフォンの3人のやりとりがいい。そして、『After Hours』と同じ親密な雰囲気を醸し出している。
 ピアノのフレーズが頭を離れず、脳内で響き続ける。肩も自然と左右に振れる。フェードアウトで終了。

 5は直訳すると、椎間板ヘルニアだそうだ。20年近く前、手術した身としては、不思議な感じがする。だって、何とも楽しそうな曲なのだ。ドラムスとギターで「ウィーン」とうなり、クラリネットも素敵な時代を感じさせて嬉しい。両手が上下に勝手に動きだす。楽しくって、ウキウキ。そして、そこかで聴いたようなフレーズも混じる、楽しい「山中節」である。ギターもグー、ビブラフォンもグー、クラリネットもグーである。後半は更に盛り上がって、ハハハハハハハハー。これぞ「ジャズ」である。
 6はGoodmanさんと山中さんの饗宴だ。「Last Call」は山中さんのオリジナルで。メドレーと言うより、あわせて作り込まれたアレンジが光る。ピアノの出だしから心に残るのだ。口笛で唄いたくなる。6人の共演と展開。ビブラフォンが刻む音を心にしまい、そして転回。クラリネットもいい。エフェクトのかかった前後の緊張感もたまらない。プチッと切れて終わる。

 徐々に盛り上がってくる7は、ハッピーなクラリネットの音が印象的。ピアノの低音も、弾けるギターもグー。ビブラフォンとドラムスのやりとりもいい。盛り上がって終わって、腰が動くのだ。8はしっとりバラード。聴かせるピアノが好きである。ドラムスのブラシ・ワークもいい。クラリネットがメロディを歌い上げ、山中さんの歌声(?)も聞こえてニヤリとする。

 エフェクトのかかったピアノで始まる9はラテンである。どこか懐かしいような、浮かれているような音とリズムの饗宴。両腕が左右に揺れる。クラリネットがいい味を出している。ピアノも情感を込める。10の出だしは、転がるピアノと支えるドラムスのブラシ・ワークがいい。そこにクラリネットが入って、ゆったり。バスローブを着た大人はジャズを聴きながら、ブランデーである。ベース・ソロがいいし、クラリネット・ソロも聴かせる。ピアノはいつもの山中節。

 11のクラリネットで始まる。転がるようにスタートするアンサンブルが楽しい。ピアノ・ソロが結構に気に入っている。山中ワールド。高く唄うクラリネットと、そろって流れてかっこいい終わり方だ。12は有名スタンダード。原曲のメロディーがビブラフォンで奏でられ、世間の喧騒を忘れさせてくれそう。そして、クラリネットのソロで温かい気持ちになれそう。ピアノ・ソロで幸せになれそう。馬鹿なことなんて無い。ギター・ソロで前向きになって、ビブラフォンのソロで、充実した魂を確認しよう。しかし、最後のビブラフォンの音がくっきりと印象的ですばらしい。

 13はタイトル曲だ。いかにも楽しそうな、ジャズで踊るホールの様子が浮かんできそうだ。確かに勝手気ままに。パーティの終わりにふさわしいウキウキ・サウンドで嬉しくなる。ピアノとクラリネットの二つの音が絡んで、転がって、ビブラフォンが切り込む。ピアノは更にイェーイと楽しそう。腰は自然によじって、ひねって、うかんで、しずんで気持ちよし。
 最後は。ピアノのソロで、モノラル録音。楽しいパーティのエンドロールだ。外に出て、冷たい風に当たって、酔いを覚まそう。ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ。名残惜しいけれど、人生はまだまだ続くのだ。どんなことがあって走るんだ。浮かれポンチだ。
 そう人は二つに分けられる。スイングする人としない人。私はずっとスイングしていたい。

 音そのものを全身で感じる快楽を決して忘れないでいたい。そんな幸福な出会いを作ってくれる山中さんの新作に感謝である。

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コメント

このアルバム、私は以前スウィング・ジャズも好きだったこともあって、それと彼女流の現代的なジャズとの融合で、楽しんで聴けました。最初は企画ものということでちょっと警戒してしまいましたが、音楽を聴くと彼女の方が一枚上手で、そういうのは吹き飛んでしまいました。

ライヴにも足を運んでらっしゃるようですね。彼女のライヴも楽しいことと思われます。

こちらからもTBさせていただきます。

910さん、こんにちは。
コメント、ありがとうございます。
TBがうまく受け付けられていなくて済みませんでした。
直しました。
昨日、HMVでエレピとベース、ドラムスのイン・ストア・イベントに行きました。トリオ・バージョンの「Airmail Special」が良かったですね。
これからもよろしくお願いいたします。
kenyama

私もこれは企画優先のリリースだと邪推し、さらに古いスタイルの演奏にも懐疑的だったのですが、そんな変な先入観なんて吹っ飛ばす快演だと思いました。

TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。

oza。さま
こんにちは。TB、ありがとうございます。MTがうまく受け付けていなかったようで、すみません。
このアルバムは、激しく何度も聞いています。
よろしくお願いいたします。
kenyama

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