やっと出会えた作品だったけれど
中古CDショップで必ず探していた作品があった。Bill EvansとGeorge Russell Orchestraによる『Living Time』(CBS)だ。必死というほどではないにしても、ずっと気になっていた。CD化されたことはわかっていた。でも、欲しくなったときには廃盤で、オークション・サイトではいいお値段。躊躇していた。

ところが、ビル・エヴァンス没後30年を記念してソニーが、格安CDとして再発売。1890円。あっけなく入手して、早速聴いている。
欲しくなったきっかけは、山中千尋さんのアルバム『Madrigal』(澤野工房) で「Living Time Event V」を聴いたことで、2004年からの念願になる。複雑で心地よく、早い展開で大好きな演奏だからだ。当然、イベントの全容を聴いてみたいと思ったわけ。
ただ、アルバムの評判を読むにと不安になった。評論家・中山康樹さんはどこかで「失敗作」と記すし、そもそもジョージ・ラッセルのオーケストラはあまり得意ではない。でも聴いてみたい。怖いもの聴きたさである。
さっそく聴き通す。ラッセルの音楽世界とエヴァンスの演奏が絡み合い、BGMのように聞き流すわけにはいかない。細かい技芸が施され、耳をそばだてて聴くことになる。
まだまだ僕には修業が足りない。ラッセルの世界を満喫することができない。批評だけ読んでいたけれど、原典にあたって、更に奥深さが見えてきた感じだ。
通勤途中、ヘッドフォンで聴いていると頭中がぐわん、ぐわんして、心地よい。でも、これを全身で満喫する境地には達していない。
買うだけではだめなのだ。自省を促す、極北のような作品である。
