2010年8月 7日

水戸のジャズ・クラブで、山中千尋さんを聴く

 初めてのお店に入るのは、いずれにしても緊張する。気持ちよく、おいしいお酒を飲みに入るのが目的なら尚更だ。そして、何かしらのきっかけで入ったお店を気に入ることがある。水戸の「B2」はそんなお店になった。
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 もちろん、山中千尋さんのライブを聴きに行ったのがきっかけ。水戸で山中さんを聴くのは初めてで、先週の新庄に続いて、身近にトリオの演奏が体感できて、素晴らしい夜だった。

 7月3日、水戸の「B2(ビー・セカンド)」はJR水戸駅から徒歩10分、50人くらいのこじんまりとしたジャズ・クラブ。駅前の緩やかな坂道を上る。舞台の背後がガラス張りで開放的な感じ。緑色のアヴァンギャルド・スピーカーが舞台上に鎮座している。どこぞのジャズ喫茶でみるより小さく感じるのは場所の成果、機種が違うのか。

 ウイスキーのソーダ割りを頼む。メニューのお値段はリーズナブルで、珍しく「ブルックリン・ラガー」もある。ガラス越しに通る人たちが見える。

 メンバーは、須川崇志 (b)、田中徳崇(ds)。演奏したのは以下の通り。

【ファースト・セット】
1、Living Without Friday
2、Take Five
3、Beverly
4、Antonio's Joke
5、What A Diff'rence A Day Made
6、Carillon
7、Liebesleid
(アンコール)
8、2:30 Rag

【セカンド・セット】
9、Sing Sing Sing - Give Me A Break
10、So Long
11、Giant Steps
12、Taxi
13、Girl From Ipanema
14、Impulsive
(アンコール)
15、Salve Salgueiro
16、Yagibushi

 定刻を少し過ぎた19時3分、トリオが登場。片肩のでた黒いワンピースに、ハイヒールの山中さんである。
 1では、質実剛健なドラムスで、ベース・ソロもよい。ピアノも力のこもったソロを聴かせてくれる。「水戸で演奏するのを楽しみにしていました」ということで、2に突入。素敵なイントロでテーマをたどる。ベースが、リズムを刻んでにやり。情感のこもったピアノ・ソロで左手に聴き入る。「少し懐かしい曲で、澤野工房の最初の曲」ということで、3が始まる。爽やかなブルックリンの風が心地よい。その場所の情景が浮かんできそうだ。力と思いの入ったピアノで、鍵盤を畳みかける。ひどい目に遭ったけれど、久しぶりに会って懐かしいが、やはり情けないアントニオの4では、小気味のいいベース・ソロだ。イケメン・ベーシストである。さて、しょうもないアントニオかもしれないけれど、前向きでうれしいピアノ・ソロに聞こえる。説得感がある。
 エフェクトの効いた5が始まる。アタックのあるドラムスもよい。もっと、迫ってきて欲しいくらいだ。6は、回り回って盛り上がっていく。素敵な力強いピアノのテーマが印象的で、フレーズが心にしみる。いいなあ、山中さん。7でも、ベースの須川さんが強く叩くソロを披露。ピアノも勿論、身体に巻き付き畳みかけて重々しい。ドラムスもギンギンだ。メンバー紹介をして、終了。20時20分。
 アンコールの拍手はやまず、8を演奏。20時25分にファーストは終了。いったん外に出て。セカンドの開場を待つ。かなりの数が通しで、通路を埋める。20時50分に再入場。もう一杯いただく。うまい。

 21時32分、3人が登場。

 9はどきどきするほど素敵なピアノで楽しい。ぐんぐんトリオだ。背後のガラス越しに自転車が通る。最初からご機嫌なセカンド・セット。
 大学の時、言うことがころころ変わる先生の話。遅刻も5~6時間である。言い訳も荻窪駅の火事、タクシーで迷って田んぼの真ん中で降ろされた、ポリープを取ってきたなどなど。深夜のミスター・ドーナツですべてのドーナツを「大人買い」で買い占めたり、スケールの大きな先生も素敵で、教えも受けた山中さんも素晴らしいね。
 10はやさしく、しょっとさみしいメロディーが印象的。ベースがぷりぷりはじいて聴かせる。ピアノは歌う。待つこと、経つこと、愛することが、So long。11は、聞き慣れたメロディーが、山中さんの手で転がっていく。首が前後に揺れる。心地よし。立ってピアノの熱演である。「アルバムでは普通だが、ライブだと」。12はしっとりと始まる。くっきりと弦をはじくベース。ピアノも高音が印象的だ。高いけど、タクシーに乗ろうと思うくらいだ。
 ジョアン。ジルベルトに、ニューヨークのホールでドタキャンされ、演奏を聴けなかった山中さんの13がピアノ・ソロが軽やかに流れ、何だかでも、雄大である。ラテンの肝は腰の軽さと話の軽さである。欲(desire)などと言ってしまったらおしまいだ。眼前の欲動(求)に身を任せてしまおう。ベースも情感を表す。
 14も激しくスタート。ベースもスピード感ですすすむ。ご機嫌で抜群だ。22時36分、一旦終了。

 アンコールは「少し雰囲気を変えて」とのことで、15だ。ラテンで嬉しいが、変わっているかどうかはよくわからない。ベースも素直に楽しめたし、訴えかけてくるようなピアノがいい。16は変化するアレンジを楽しんで、激しい躍動感を満喫。「また、お会いしましょう」22時55分。

 初めてだったけれど、のんびりと楽しい時間を過ごせるB2だった。頻繁に顔を出せないのが残念である。

 水戸の夜は、まだ続くのだ。

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