山中千尋さんのライブで鉄の街、北九州の夜が熱いのだ
のんびり進む台風の影響で、強い風が止まない9月3日の夜。北九州市の若松市民会館大ホールで、山中千尋トリオのライブが開かれた。若松鉄人Jazz15のプレミアムステージという位置づけで、予定時間を大幅に超過する盛り上がりだった。

九州での山中さんのライブは久しぶりで、800人規模の大ホールが埋まる。震災復興支援をうたったイベントで、入場料の一部を義援金にあて、郡山のフロンティア大使をつとめる山中さんがその目録を預かった。
会場の外は風雨が激しく、行列もできたため、開場は早まり、ロビーに行列ができる。18時20分、ホールへの開場も早まって、座席を確保する。
公立のホールでロビーで、ビールはない。18時50分、開演予告のアナウンスが流れ、55分、暗くなって、本イベントの主催者の和田さんらが登場。イベントの説明とお礼がある。台風の影響で、山中さんたちが来られないかもしれないと不安だったという。続いて、北九州市若松区長のあいさつがある。山中さんの名前を間違える失礼な人であった。
開演定刻の19時、トリオが登場。山中さんは黒の胸元の開いたワンピースで、今日も、とても綺麗である。
メンバーは、ピアノの山中千尋さんのほか、東保光(b)、岡田佳大(ds)。演奏したのは以下の通り。
1、Outside By The Swing
2、Take Five
3、When You Wish Upon A Star
4、Rain, Rain And Rain
(休憩)
5、Take Me In Your Arms
6、Giant Steps
7、Can't Take My Eyes Off Of You
8、Yagibushi
9、So Long
1のイントロは瞑想的で、演奏への期待が高まっていく。聴き慣れたテーマに入って、ピアノ・ソロも変幻自在。2も楽しく進行。ベース・ソロで東保さんが歌うのだ。見かけによらず悪人だという噂だ。見た目はまじめそうなのだが。ピアノ・ソロも素晴らしく、ドラムスも元気である。
MCでは、デッカから全米デビューを果たした報告と、イタリアで演奏しているとき、急に雨のためから巨大なPA用のスピーカが落ちてきて、バンと大きな音がして驚いた話し、3.11の東日本大震災にもかかわらず演奏できるのはありがたい、「早く復興して欲しい」という思いを込めて3が始まる。思いがしんみりと伝わってくる。ベース・ソロもいい。
4は、新アルバム『Reminiscence』の冒頭曲のオリジナルで、聴くものを一気にアルバムの「千尋世界」に引き込んでいくメロディは素敵である。この曲は「いつも雨だったロンドンで思いついた曲名」だそうだ。
この曲を作ってから、晴れ女だったのが「雨女」になったという。確かにこの春以降だと、6月から7月にかけての太田、東京、広島、高松は雨模様だったし、8月の札幌も雨だった。うーん。
しかし、音楽はお天気とは別。いいなあ、うれしくなるメロディに聴き入る。左手がパワフルなピアノ・ソロで、すでに激しく進化している。掛け声と拍手が沸き起こる。ドラムスも燃えて、19時43分。約10分間の休憩だ。
休憩といってもロビーにはお酒はなく、清涼飲料水の自動販売機があるだけ。ぼーっと過ごす。
19時57分、舞台のバックが赤い照明で照されてから、3人が登場する。
5は、ユタ・ヒップの演奏で知られるスタンダードで、山中さんのアルバム『Abyss』に収録されている。アレンジとソロがいつも楽しみな曲だ。やっぱりご機嫌なピアノ・ソロで、テンポも速い速い。ドラムスとの応酬も満喫できた。6は、「どこにも着地しない感じを聴いてください」とのこと。弾き抜けるピアノ・ソロで、もはや原形をとどめないし、到達もしない。が、高みあることは確かだろう。全員がのせられて、激しくなる。
7は、新アルバムの最後の曲「君の瞳に恋してる」。ドラムスがいかにもなリズムを叩いてスタートし、ノリノリなテーマで、ピアノ・ソロがうたう。いろいろなフレーズがちりばめられている。だんだん激しくなって、ガンガンに終了。8では、秋の童謡(赤とんぼ)のイントロで始まる。
進化し続けるので、Web2.0ならぬ、Yagibushi3.0であろう。じっくりソロを聴かせて、組み立てて、表現力を増している。20時41分に終了。3人に花束が渡され、福島・郡山のフロンティア大使を務める山中さんに義援金の目録が渡される。
拍手はなりやまず、アンコールの9では、「待ってました」の掛け声も。ベース・ソロにも力が入る。ピアノ・ソロでは、「チョコレートは明治」だし、情熱的なピアノが響く。20時57分、終了。
会場の音響は、PAの調整なのか、とてもおとなしい澄んだ色だった。その意味では、いつもと色合いの違う千尋節を楽しんだ。
ロビーではサイン会の長い列ができる。夜は終わらないのだ。
