水戸の雨を吹き飛ばす、山中千尋さんのNYトリオ
直前まで降っていた雨も上がる。ガラス張りが美しいジャズ・クラブ、水戸のB2(ビー・セカンド)の11月19日は、熱気に満ちていた。山中千尋さんのニューヨーク・トリオによる演奏で、B2での演奏は、2010年7月以来になる。小さなクラブで、ピアノの生音が耳にくっきりと残る。

山中さんは、朝の群馬、午後の鹿島と、本日3本目となるトリプル・ヘッダーのタイトなスケジュール。でも、勢いあるステージを披露してくれた。
この秋のツアーは、アルバム『Reminiscence』の収録メンバーによるライブで、楽しみにしていた。定刻18時過ぎに開場し、アヴァンギャルドのスピーカーが鎮座する舞台に、カワイのピアノが開演を待つ。バックはガラス張りで、来場者だけでなく、通行人ものぞき込んでくる。
飲み過ぎは行けないので、ジントニックをいただく。600円で、うまい。
19時すぎ、注意事項がアナウンスされ、会場が暗くなる。小さなクラブだが、満席である。3人が登場。山中さんは黒いワンピースで、とても美しい。
16日間、イタリアをツアーしたことを報告し、今日は三つ目のステージであることも明かす。そして、メンバー紹介だ。
Yoshi Waki(b)、John Davis(ds) である。演奏したのは以下の通り。
【ファースト】
1、She Did It Again
2、Rain, Rain And Rain
3、Can't Take My Eyes Off Of You
4、Living Without Friday
5、Antonio's Joke
6、Sing Sing Sing
(アンコール)
7、So Long
【セカンド】
8、I'm Gonnna Go Fishin'
9、Take Five
10、La Samba des Prophets
11、Take Me In Your Arms
12、Liebesleid
(アンコール)
13、So Long
14、2:30 Rag
15、Yagibushi
最初の1は、重いイントロで始まる。ベース・ソロもくっきりもいい。続くピアノ・ソロも低音が効いている。力強く始まるライブで、グーなのだ。お天気が雨だったことにちなんで、野鳥の会の折り畳める長靴を紹介する山中さん。雨繋がりで2に。しっとり、優しいスタートで、アレンジが進化している。今日は歌わない。3は、ポップの王道である。アルバムに収録された演奏より、丁寧でゆっくりしたアレンジで、抜群だ。
ニューヨークのジャズ・クラブ「Iridium」でのライブを収録したDVD『Live In New York』にもある4はイントロも聞かせる。ピアノ・ソロが凝っていて、カッコいい。激しいし、飛んで跳ねる。最後に追加されたドラムス・ソロを身体で浴びる。「まったりした曲」の5は、ドラムスが印象的で、ブラシの音が耳にのこる。ピアノ・ソロも熱演だ。「いいなあ、音が踊って、歌って、響く」と心の中で頷く。
6は、ジャングルのように音が乱舞するドラムスで始まり、「Saturday In The Park」。ニコリだね。20時23分、一旦終了。しかし、そのままアンコールに突入。満員の会場で舞台を出入りするだけで大変なのだ。
7は、お母様から「ピアノの練習しないのなら、帰ってこなくていい」と言われて、「じゃあ、バイバイ」ということで作った、「さようなら」の曲。歌うベース・ソロで、響くピアノ・ソロだ。20時35分、終了。
雨模様ということで、入れ替え制だけれど、外に出ないですむ。瓶のブルックリン・ラガーをぐびぐび。山中さんお勧めのビールである。
人が入れ替わって、更に人数が増える。
21時30分に暗くなり、35分、3人が登場。
8は出だしの、ピアノとドラムスのやり取りがおかしい。そして、おも重いテーマからスタートする。軽やかなピアノ・ソロが気持ちよい。9は、演奏するたびに崩壊するらしいけれど、どうしてどうして、ドラムスのリズムの刻みが新鮮で、ベース・ソロも素敵だ。さらにドラムス・ソロが素晴らしいのだ。
10はサンバで、高音がピアノから響く。ベースも歌いながら、ピアノを支える。11ではドラムスとピアノの応酬がよろしい。12はテーマに続いて、泣きのベース・ソロだ。ドラムス・ソロもよく、ピアノは勇ましい。22時40分。
アンコールが始まる。「11年目の来年は違う企画でアルバムを作ろう」と決意を表明する。13は、そこはかないピアノがいいし、14は速いテンポでピアノが鳴る。最後の八木節で、大盛り上がりである。23時5分。
しかし、でき上がった酔っ払いはみっともないものだ。自省も込めて思う。本人はいいけれど、周りは醒めるばかり。
夜の湿った風が駅前の坂道を下るのだ。
